2015 Fiscal Year Research-status Report
放射線照射下の表面励起効果を考慮した腐食促進機構の解明
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15K06675
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
小河 浩晃 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究員 (10414559)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井岡 郁夫 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究員 (10354804)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射線励起反応 / 腐食 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線照射下の表面励起効果による水中の材料の腐食促進機構の解明を実施する。この場合、水の放射線分解によって生成した水素と酸素のイオン種量が重要となる。これらイオン種量を評価するためには、pH法と電気伝導度法が有効である。 水の放射線分解の解離度を評価するための基礎的データとなる水の解離度の温度変化を調査した。水の解離度は、大気圧下、沸点100℃条件では、pH換算で、pH=6.6-6.8程度である。そのため、常温から100℃では、pHはほぼ一定として扱うことができる。さらに高温にした場合の解離度の変化は、加圧条件下となる。そこで、原子炉内環境下の圧力7MPa、温度280℃を想定した場合の解離度の評価を行った。解離度は。常温大気圧下と比較して、1000倍程度増加することが分かった。この解離度の増加は、pHに換算すると、pH=7から、pH=5.5程度に下がったことになり、見かけ上、酸性に傾いたことになる。しかし、OH-イオンもH+イオンと等量存在することから、pHの中性点が、pH=7から、pH=5.5へ変化したと考えるべきである。中性点が、pH=5.5に変化したとすると、pHのフルスケールは、pH=11までとなる。 これを検証するために、放射線照射下の水野解離度測定は、pH法と電気伝導度法によって実施することを検討している。それら測定機器は、放射線照射に耐えうる改造が必須であり、その改造に長時間を要したが、放射線照射下でそれらの測定ができるように改造への可能性を考案した。放射線照射下の解離度測定は、改造後、順次、実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
放射線照射下の水の解離度測定は、pH法と電気伝導度法によって実施することを検討しているが、それら測定器は、放射線照射に耐えうる改造が必須である。それら改造のため、測定装置メーカーと議論を重ねてきたが、困難を極め、時間を要した。これによって、実験に遅延が生じた、しかし、改造の妥協点を見つけ出し、実際に、放射線照射下の水の解離度測定が可能な改造案を考案した。この遅延分は、次年度(H28年度)の前半で取り戻せる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の推進方策は以下の通りである。「4-6月:前年度の遅延分の実施する」。「7-12月:酸化物半導体特性に注目して、n/p型のキャリアーの違いによる表面励起効果と腐食促進効果を評価する」、具体的には、金属表面に形成される酸化皮膜は、半導体特性を示すが、n/p型のキャリアーの違いによって、酸化機構が異なる。放射線照射下では、水の放射線分解によって発生した酸素/水素により、酸化と水素吸蔵が同時並行して生じる。さらに、金属表面により励起効果が高まるため、酸素/水素のイオン種量が増加するため腐食が促進すると考えられる。「H29/1-3月:腐食促進の痕跡を見つけるため、その試験材の表面分析を、X線光電子分光分析装置、オージェ電子分光分析装置、二次イオン分析装置、ラマン分光測定装置を使用して実施する」。 放射線照射下の金属表面では、表面励起効果が作用するため、水起因のイオン種量の増加が期待でき、酸化膜成長の促進、水素浸透の増加が予想できる。
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Causes of Carryover |
放射線照射下でのpH測定及び電気伝導度測定において、それら測定器は、放射線の影響を受けて、故障する可能性が高い。そのため、放射線照射に耐えうる特別な改造が必須であるが、その改造に対応できる測定メーカーの選定及び、改造の可能性の検討に時間を要した。このため、放射線照射に耐えうる特別な改造は、次年度(H28年度)に行うことになり、差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この特別な改造は、次年度(H28年度)6月までに実施終了予定である。主な改造箇所は、「pH測定器:26万円」、「pH電極:14万円」、「電気伝導度計:26万円」、電気伝度度計の測定子である「Pt電極:14万円」である。
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