2015 Fiscal Year Research-status Report
薬物報酬に基づく行動発現における腹側被蓋野-内側前頭前野ドパミン神経伝達の機能
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15K06765
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
金田 勝幸 金沢大学, 薬学系, 教授 (30421366)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 薬物依存 / 腹側被蓋野 / 内側前頭前野 / 報酬記憶 / 渇望 / ドパミン / コカイン / 脳内報酬系 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬物依存症での重要な問題は、薬物の報酬経験が摂取した環境・文脈により想起され、薬物への渇望感が生じ、薬物を再び摂取してしまうことである。薬物報酬記憶の想起と渇望感を生成する脳内メカニズムを解明することは、薬物依存症の治療法・治療薬の確立・開発につなげていくうえで非常に重要である。これまでの研究から我々は、この過程に報酬系の主要な神経核である腹側被蓋野(VTA)のドパミン(DA)ニューロン活動が関与することを示唆する知見を得た。本研究では、まず、この点をさらに追究し、VTA DAニューロンの役割を明にすることを目指す。一方で、DAニューロンは複数の脳領域に投射しているために、DAがどの脳部位で、どう作用することで報酬記憶の想起と渇望感の生成に関与するのかは不明である。VTAの主要投射先の一つである内側前頭前野(mPFC)は脳内報酬系を構成しており、記憶や意思決定にも関わることが報告されている。さらに、mPFCはVTAに投射し、双方向性の情報伝達を担っている。したがって、mPFCが報酬記憶の想起と渇望感の生成に関与する可能性が考えられる。そこで本年度はこの仮説を検証するため、コカイン条件付け場所嗜好性試験を用いた行動薬理学的手法を用いて、mPFCでのDA神経伝達が、報酬記憶の想起と渇望感を反映する場所嗜好性の発現に関与するか否かを検証した。具体的にはコカイン条件付け後、ポストテストの直前にラットのmPFCにD1あるはD2受容体拮抗薬を微量投与したところ、D1受容体の遮断によりコカイン場所嗜好性が顕著に抑制されることを見出した。この結果は、mPFCでのD1受容体を介したDA伝達が報酬記憶の想起と渇望感の生成に関与する可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の実施計画に記載した研究内容を遂行できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に記載したように、場所嗜好性の発現に関与するmPFCのニューロンタイプをcFosの発現を指標として明らかにしていくとともに、薬理遺伝学的手法により、細胞種選択的に神経活動制御を行い、活動と行動との因果関係を明らかにしていく。
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Research Products
(2 results)