2017 Fiscal Year Research-status Report
卵巣癌の増殖・浸潤を抑制するエクソソーム内在マイクロRNA探索と作用機序の解明
Project/Area Number |
15K06820
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
堀江 香代 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (30626825)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 純 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (10201188)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | エクソソーム / microRNA / 卵巣癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに漿液性嚢胞腺癌(HRA)、類内膜腺癌(TOV112D)、粘液性嚢胞腺癌(MCAS)、明細胞腺癌(HAC-2)、ヒト卵巣表面上皮細胞(HOSE)の培養上清からエクソソームを抽出し、内在するmicro RNAのマイクロアレイ解析を行い発現プロファイルを明らかにしたが、癌細胞で共通して発現の増加を示すエクソソーム内在miRNAが1種のみであった。また明細胞腺癌(HAC-2)の発現動態が他の細胞とかけ離れていたなどの問題点が浮上したため、新たに明細胞腺癌(OVAS)の細胞株を追加し、その他の細胞についてもマイクロアレイの再現性を確認するために再度エクソソームを回収からやり直しマイクロアレイ解析を行った。その結果、正常コントロールとの発現比(FC)を1.2倍で検出したところ発現の増加を認めたエクソソーム内在miRNAを30個、発現の減少を認めたエクソソーム内在miRNAを68個検出した。その中でマイクロアレイによって癌細胞で共通して発現の増加を認めたmiRNAとして検出されたmiR-574-3Pは卵巣癌に関係する報告があることからリアルタイムPCRによるmiRNAの定量を行うこととした。リアルタイムPCRを行うにあたりエクソソームでは特定の内在性コントロールが確立しておらず、まずは内在性コントロールの検討を行いU6が内在性コントロールとして適していることを確認した。その後リアルタイムPCRによるターゲットmiRNAの定量を行いマイクロアレイの結果を検証した。また、エクソソーム内在microRNAが想定以上に微量でリアルタイムPCRでは十分な解析ができなかった。そこで、より高感度なDroplet Digital PCR (ddPCR)による解析に切り替えるためにddPCRの解析条件の検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度の計画はやや遅れている。その理由としてエクソソーム内在miRNAのリアルタイムPCRの条件検討に時間がかかったことや、エクソソーム内在miRNAの発現量が低く、マイクロアレイ解析では癌細胞で共通に高発現を示したmiR-574-3Pをターゲットとして解析を進めたが、ヒト卵巣表面上皮細胞と比較してすべての組織型の卵巣癌細胞株でほとんど変わらないか発現が低下しているという結果を示した。これはエクソソームに内在しているmiR-574-3Pの発現量が低く、コントロールとの比較が正確に行われなかった可能性が考えられた。そこで、リアルタイムPCRに用いたサンプルについてアガロースゲルによる確認を行ったところ、miR-574-3Pのバンドは検出されなかった。しかしながら内在性コントロールU6のバンドは検出できており、エクソソーム内在miRNAの抽出やリアルタイムPCRによる miRNA検出の実験系は確立されていることを確認した。エクソソーム内在miR574-3Pの発現量が少ないことからリアルタイムPCRサンプルを鋳型として再度リアルタイムPCRを行ったところ、以下の結果が得られた。コントロールであるヒト卵巣表面上皮細胞(HOSE)細胞との発現比は漿液性嚢胞腺癌(HRA) 1.6、類内膜腺癌(TOV112D) 1.6、粘液性嚢胞腺癌(MCAS) 6.3、明細胞腺癌(HAC-2) 1.2、明細胞腺癌(OVAS) 1.6 といずれも増加が認められマイクロアレイの結果が裏付けられた。また、微量なmiRNA測定のためにDroplet Digital PCR (ddPCR)による解析を行うための解析の条件検討を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.卵巣癌患者腹水を用い、miR-574-3Pのバイオマーカーとしての意義を検討するために①患者腹水中のmiR-574-3PについてRealtime PCRを用いた定量 ②癌細胞有無との比較 ③病期との関連の比較 を行う。以上の結果よりmiR-574-3Pが卵巣癌の予後因子となる可能性を検討する。なお、予測される結果としては腹水中に癌細胞が存在する方がmiR-574-3Pの発現が増加する。また、stageが上がるにつれmiR-574-3Pの発現が増加するなどが考えられる。 2.抗がん剤や化学療法を行った患者腹水中のmiR-574-3Pを測定し、その発現動態を検討し治療効果の予知因子となる可能性を検証する。なお、予測される結果としては完全緩解(CR)の患者ではmiR-574-3P発現が低下することが考えられる。 3. miR574-3Pにおける細胞増殖・浸潤に関する機能の解明としてmiR-574-3P抑制エクソソームを作成し、エクソソーム添加後の細胞について細胞増殖・生存アッセイを行う。予測される結果としてmiR-574-3P を抑制したエクソソームによる細胞増殖抑制や浸潤能の減少が確認されればエクソソーム内在miR-574-3Pはオートクライン型の増殖・浸潤因子として作用することが示唆される。同様にmiR-574-3P 抑制エクソソームを中皮細胞に取り込ませ中皮細胞の細胞増殖能を確認及びアポトーシスの定量を行う。miR-574-3Pの存在によって中皮細胞の増殖が抑制されるまたはアポトーシスの亢進が進む現象が認められれば、腹膜を構成する中皮細胞に隙間ができることで腫瘍細胞が浸潤するなど、卵巣癌における新規の浸潤機構を示すことが可能となる。
|
Causes of Carryover |
【理由】エクソソーム内在miRNAリアルタイムPCRの解析条件の確立に想定以上に時間がかかり、昨年度予定であった「候補miRNAを過剰導入・抑制した腫瘍抑制型エクソソームの作成」に着手できず、遺伝子導入や遺伝子抑制に関する試薬を購入しなかったため。 また、抽出したmiRNA量が予想よりも大幅に少量でありリアルタイムPCRでは十分な解析ができなかったため、解析法をより高感度なデジタルPCRに切り替えたため。 【使用計画】本年度の差額は次年度に行う「候補miRNAを過剰導入・抑制した腫瘍抑制型エクソソームの作成」のために使用する。また、デジタルPCRに関する試薬やプレートなどの消耗品に使用する。
|
Research Products
(3 results)