2015 Fiscal Year Research-status Report
悪性リンパ腫発症・悪性化における腫瘍免疫回避を誘導する分子機構の解明
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15K06840
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杉原 英志 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (50464996)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リンパ腫 / アポトーシス / Fas / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
バーキットリンパ腫(BL)やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)をはじめとする成熟B細胞型リンパ腫は胚中心B細胞由来のリンパ腫である。本研究室にて開発した成熟B細胞型リンパ腫マウスモデルを用いて、リンパ腫形成に関わる免疫関連分子について解析を行った。その結果、起源細胞である胚中心B細胞において高発現しているFasがリンパ腫発症に伴い発現が完全に抑制されることを見出した。このFas発現の抑制がリンパ腫の発症や維持にどのような役割を果たすのか明らかにするため、胚中心B細胞においてshRNAによるFas発現の抑制を行ったところ、リンパ腫形成率が増加し、マウス生存期間が短縮された。またリンパ腫初代培養細胞にFasを恒常的に発現し移植したところ、有意に生存期間が延長することが分かった。FasはFasLが結合することでアポトーシスを誘導する受容体であり、本来胚中心B細胞において抗体産生細胞の選択に重要な働きをしている。そこでFas発現に関わる分子を同定するため様々なB細胞活性化の関連因子を調べた。その結果、CD40アゴニスト抗体を処理すると、Fasの発現が胚中心B細胞レベルまで回復することを見出した。さらに回復したFasはFasLによって速やかにアポトーシスを誘導することを明らかにした。またヒトBL及びDLBCL細胞株においてもCD40シグナルの活性化によってFas発現が回復し、FasLによってアポトーシス誘導が起こることが分かった。これらの結果からFas発現の回復はリンパ腫の新規治療法になり得ることが示された。さらにリンパ腫を起こすGCB細胞に特異的に発現する免疫関連分子を調べたところ、M-CSFやCCL2、IFNγなどの因子の増減が見られた。つまりこれらの分子が微小環境へ影響を及ぼし、リンパ腫発症に何らかの寄与をしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画通り、成熟型B細胞リンパ腫マウスモデルを用いてFas発現の抑制がリンパ腫形成・維持に重要であることを示した。また、ヒトリンパ腫細胞株においても同様な傾向が見られ、実際のヒトにおいてもリンパ腫発症に腫瘍免疫回避機構が重要である可能性を示すことができた。また幾つかの免疫に関連する放出因子も同定しているので来年度のさらなる進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 幾つかのリンパ腫細胞株ではFas発現回復によって誘導されるアポトーシスに抵抗性を示した。今後この抵抗性に関わる分子を同定し、この分子の阻害がアポトーシス誘導やリンパ腫の治療に重要であるのか検討を行う。 2. 免疫関連分子や代謝関連分子などリンパ腫特異的に変動する因子の検討を行い、リンパ腫発症に免疫抑制微小環境がどのように影響を及ぼすのか解析を進める。 3. 免疫細胞特異的に欠損したマウスを用いてリンパ腫形成においてどのような免疫細胞が働くのか検討を行う。
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Research Products
(7 results)