2015 Fiscal Year Research-status Report
ヒト多能性幹細胞におけるオフターゲット効果の少ない効率的なゲノム編集技術の開発
Project/Area Number |
15K06924
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
曽根 岳史 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (00379091)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ゲノム編集 / iPS細胞 / CRISPR / ノックイン / ウイルスベクター / 遺伝子治療 / 相同組換え / 疾患研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノム編集技術の発展に伴い、TALENやCRISPRなどのゲノムの任意の標的遺伝子を特異的に切断するDNA切断酵素を発現するためのベクターにはさまざまな改良が施されてきた一方で、供与核酸としての標的組換えベクターの構築が次なるボトルネックとなってきている。そこで平成27年度前半は、まずヒトiPS細胞のゲノム編集を効率よく行う上で標的組換えベクターの簡便な構築方法を確立した。 この方法で構築した標的組換えベクターと標的遺伝子を切断するTALENを電気穿孔法によって導入することで、実際に、Dravet症候群、家族性ALS、Pendred症候群、家族性Parkinson病の患者由来のiPS細胞等でその疾患の原因となっている遺伝子を修復したり、正常なiPS細胞に患者由来の変異を導入したりすることに成功し、その成果を複数の国内および国際学会で発表した。特に家族性ALSの患者において疾患の原因として同定されたFUS遺伝子の変異をゲノム編集技術によって健常人由来のiPS細胞に導入したものについては、細胞を運動ニューロンに分化させると、患者由来のiPS細胞と同様にFUS タンパク質の存在部位の異常、FUS タンパク質を伴うストレス顆粒の形成、アポトーシスの誘導、短縮した神経突起といった複数の多角的な病態を示し、このFUS遺伝子変異が確かに病態の原因となっていることを証明しStem Cell Reports誌でも発表した。 さらに、平成27年後半は、この標的組換えベクターやTALENおよびCRISPR発現ベクターをadenovirusやlentivirusなどのベクター骨格に自在に乗せ換えるためのベクター系の構築を行なっており、ヒトiPS細胞へも高効率で遺伝子導入可能なゲノム編集ベクター系がまもなく完成する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の平成27年度の研究計画においては、標的組換えベクター系の完成とともに、ヒトiPS細胞へ高効率で人工制限酵素遺伝子や供与核酸などのゲノム編集ツールの遺伝子導入を実現するために、CRISPRタンパク質発現ベクターや供与核酸ベクターをウイルスベクター化することを目標とした。当初は供与核酸の保持にAAVを使用することを計画していたが、容量の限界から取り扱いが難しいAAVベクターを避け、アデノウイルスベクターと挿入欠失型レンチウイルスベクターを主な対象とした。どちらのベクターもGatewayクローニング法に対応させ、目的に応じて任意のプロモーターと連結し、さらにCas9の場合には標的認識に必要なsgRNA発現ユニットも含めてウイルスベクター骨格上に簡便に組み上げることが可能にした。この方法で構築したall-in-oneベクターは、電気穿孔法による一過性導入においては、既存のプラスミドベクターと遜色なく機能してゲノム編集に使用可能であり、標的組換えベクターとの組み合わせによって家族性Parkinson病の原因遺伝子であるPARK2遺伝子のKO株なども樹立可能だった。一方で、ウイルスベクターとしてはall-in-oneにしたことによりサイズが大きくなりすぎたためか、力価が低く使えないことが判明したため、不要な配列を除いてサイズを小さくすることや、sgRNAとCas9遺伝子の発現ユニットを別々のベクター上に分離するデザインで構築をやり直している。一方でアデノウイルスベクターに関しては、家族性ALSの原因遺伝子であるSOD1遺伝子を標的としたベクターが完成し、まもなく実験を開始できる見込みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、標的組換えベクター系の完成までで実際にウイルスベクターの使用による標的組換え効率の向上の確認までは進めななかったがプラスミドベクターでの検証においては、FokI-dCas9法では、野生型Cas9やDouble Nickase法と比較して切断効率がかなり落ちてしまうことが判明した。一方で CRISPRの技術の進歩は非常に早く昨年度の実験開始時には存在しなかった標的配列への認識特異性の向上したSpCas9(eSpCas9(1.1)、SpCas9-HF1)などが登場し、オフターゲット切断の軽減にこれらの改良型Cas9が使用できる可能性が高まった。また標的配列の3’側のNGGをPAM配列として認識する従来のCas9とは異なり、5’側のTTNをPAM配列として認識する新規CRISPRタンパク質であるCpf1も実用化されゲノム中の標的配列選択の幅がさらに広がった。これらの新規な CRISPRタンパク質も積極的に本実験計画に取り入れて検証の対象としていく。また当初の計画においては ランダム挿入を防ぐためにジフテリア毒素A断片(DTA)遺伝子に代わる新たな陰性選抜マーカー遺伝子を検討することを掲げていたが、その候補として挙げていたiCaspase9がそれほど確実ではないこと、現実問題として陰性選抜マーカーなしでもそれほどランダム挿入が起こっていないらしいことが分かってきたため、この研究項目については割愛したい。
|
Causes of Carryover |
平成27年度においては研究計画の進行状況を鑑みて、ゲノム編集株の次世代シークエンス解析を割愛したためである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次世代シークエンス解析は、年々費用も下がっていることもあり、研究計画の進捗や必要性に応じて適切な時期に実施する予定である。
|
Research Products
(8 results)
-
[Journal Article] Establishment of in vitro FUS-associated familial amyotrophic lateral sclerosis model using human induced pluripotent stem cells.2016
Author(s)
Naoki Ichiyanagi, Koki Fujimori, Masato Yano, Chikako Ishihara-Fujisaki, Takefumi Sone, Tetsuya Akiyama, Yohei Okada, Wado Akamatsu, Takuya Matsumoto, Mitsuru Ishikawa, Yoshinori Nishimoto, Yasuharu Ishihara, Tetsushi Sakuma, Takashi Yamamoto, Hitomi Tsuiji, Naoki Suzuki, Hitoshi Warita, Masashi Aoki, Hideyuki Okano
-
Journal Title
Stem Cell Reports
Volume: 6
Pages: 496-510
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-