2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞周期進行促進因子Cdc25Bの安定化に関わるPPaseの解明
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15K06993
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山下 克美 金沢大学, 薬学系, 准教授 (10191280)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Cdc25B / リン酸化 / プロテインホスファターゼ / ユビキチン化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「Cdc25Bの安定化を促進するプロテインホスファターゼ(PPase)の解明」が目的である。予備実験により、オカダ酸感受性のPPaseが候補となったため、27年度はまずオカダ酸に対して最も感受性が高いPP2Aについて、以下の戦略による解析を計画した。 即ち、①緑色蛍光タンパク質(GFP)融合Cdc25B発現細胞を樹立し、②制御サブユニット(Bサブユニット)が異なる種々のPP2Aを細胞中で発現させ、③蛍光強度の変動(本研究では増強)を指標に、④候補となるPP2AのBサブユニットを明らかにすることにより、⑤PP2AによるCdc25Bの制御機構を解明する。 ①については、計画通り複数のGFP融合Cdc25B発現細胞株を樹立した。しかしながら、GFP融合Cdc25B発現HeLa細胞ではGFPの蛍光強度が極めて低く、申請時において一過的発現系での予備実験で観察されたオカダ酸処理による蛍光強度の増強は、今回の安定発現細胞株では明確には観察されなかった。このため、実験系の改変ならびに作業仮説の再検討が必要となった。 ②についてはまず、アフリカツメガエル(Xenopus)由来の、8種のBサブユニットのcDNAを細胞へ導入し、内在のヒトの足場サブユニット(Aサブユニット)および触媒サブユニット(Cサブユニット)と複合体を形成し、PP2Aホロ酵素活性を持つことを期待した。しかしながら、免疫沈降物の酵素活性測定ならびにウエスタンブロッティング(WB)により検討では、酵素活性・WBともに再構成されたという証拠は得られなかった。 以上のことから、研究の全体計画達成の第一歩として設定した③と④と⑤へは研究展開ができないこととなった。28年度以降はこれらの結果をもとに、作業仮説とそれに伴う研究戦略を練り直し、当初の研究目的の達成を図る。詳細は【今後の研究の推進方策等】の項に記した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通りに研究が進展しなかった理由は、主として以下の2点と考えられる。 (1)当初の計画では、Xenopus由来のBサブユニットcDNAのヒト細胞への導入により、BサブユニットはヒトのCサブユニットならびにAサブユニットとホロ酵素複合体を再構成し、PP2Aの酵素活性を生じることを期待していた。ところが、研究協力者から譲渡された8種のXenopus BサブユニットのcDNAをHeLa細胞で発現させ、免疫沈降にてBサブユニットタンパク質を回収しPPase活性を測定したが、8種類すべてのcDNAでPPase活性が検出できずまた、免疫沈降物のWBでもA、C両サブユニットとも検出されなかった。すなわち、当初計画していたXenopus由来のBサブユニットcDNAを用いた解析は本研究には不適当であることが判明した。28年度以降は、ヒトのcDNAを用いて研究を進める。 (2)Cdc25Bの安定性は、GFP融合Cdc25BをGFPの蛍光強度変化を指標にして評価する計画であった。27年度は、当初の計画通りGFP融合Cdc25Bの発現細胞を複数株樹立したが、樹立した全ての細胞において、定常状態での蛍光強度が弱いうえ、細胞ごとに蛍光強度のばらつきがあり、蛍光強度の変化を可視的かつ定量的に捉えることが困難であったため、当初の研究目標の達成には至らなかった。 一方、予定通りに進行した研究は以下に示される。 本研究開始時に、Cdc25Bの安定化を制御する可能性がある、オカダ酸感受性のセリン・スレオニンホスファターゼとして、PP2A以外にPP4、PP5ならびに、PP6を想定していた。これらを検定するため、それぞれのPPaseのCサブユニットのヒトのcDNAを入手し、FLAG配列を付加した遺伝子の発現系を構築した。28年度は、これを用いて候補PPaseの検定を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度の研究結果に基づき、28年度以降は研究計画ならびに研究戦略を変更し、当初の研究目的を達成する予定である。計画と準備状況を以下に記した。 (1)当初の計画ではCdc25Bのみの解析であったが、Cdc25Bと同様にリン酸化により安定性が制御されるCdc25Aも、方法論的に相同な実験系で安定性の検定が可能であるため、研究対象に加える。まず、GFP融合Cdc25Aを作成し、緑色蛍光の強度変動を測定するとともに、WBでも安定性を検定する。すでに両遺伝子とも、テトラサイクリン誘導的発現制御系構築のためにレンチウイルスベクターへ導入しており、HeLa細胞において細胞株を樹立予定である。 (2)Cdc25Bの安定性を制御する候補遺伝子を、PP2Aだけではなくより広く検索するために、ヒトPP1、PP2A、PP4、PP5、PP6のCサブユニットについても、レンチウイルスベクター系でテトラサイクリン誘導発現系を構築し、細胞株を樹立し、研究を進める。また、PP2Aの解析においては、Bサブユニットのうち、3種のB56遺伝子cDNAを入手が可能となったため、レンチウイルスベクターへ導入し、ヒトPP2AのBサブユニット誘導発現細胞を樹立する。Cdc25B (Cdc25A) の安定性は、蛍光強度やGFP、GFP融合Cdc25B (Cdc25A) のみならず、より直接的に内在タンパク質のWBでも検定する。 (3)Cdc25BとCdc25Aは多くの腫瘍で発現の亢進が報告されている。PP2AやPP6は癌抑制遺伝子として作用し、また腫瘍細胞では活性が抑制されているとの報告もある。癌抑制活性があるPP2AやPP6が癌化を促進するCdc25AやCdc25Bを安定化するとの仮説は、論理的に矛盾する可能性があるため、腫瘍で発現亢進が報告されているセリン・スレオニンホスファターゼについても解析対象とする予定である。
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