2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K07091
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大塚 幸雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (90344192)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ホヤ / 神経堤細胞 / 神経板境界 / 細胞移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脊椎動物に固有な形質である神経堤の進化的起源を探るために、脊椎動物に最も近縁な無脊椎動物であるホヤが神経堤細胞に類似した細胞を有するか否かについて細胞・分子レベルで検証するものである。初年度である本年度は、神経堤細胞のような「移動能を有する細胞」がマボヤ胚の神経板と予定表皮領域の境界(神経板境界)に存在するかを検証するとともに、神経堤の形成および分化に関与することが報告されている遺伝子をマボヤ胚からクローニングすることを行った。その結果、以下の成果を挙げた。 1、マボヤ後期嚢胚の神経板境界を構成する特定の細胞一個をカルボシアニン蛍光色素DiIまたは NeuroDiOでラベルし、ラベルされた細胞の尾芽胚における挙動を15分おきに観察した。その結果、神経板境界を構成する細胞うちb9.36とb9.49に由来する細胞が尾芽胚の尾部先端部分から正中線に沿って前方に移動することを明らかにした。また、この細胞移動が卵膜を除去した胚では起こらないことから、細胞移動に液性因子が関与することが示唆された。 2、公開されているマボヤのゲノム情報をもとに、神経堤の形成・分化に関与する因子に相同なマボヤ遺伝子の配列を推測し、推測した翻訳領域のクローニングをRT-PCR法により行った。その結果、マボヤ胚から神経堤の誘導に関与するシグナル分子に相同な遺伝子17個、神経堤の決定に関与する転写因子に相同な遺伝子18個、細胞移動関連因子に相同な遺伝子4個をクローニングした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である本年度は、神経堤の進化的起源を探る第一歩として、これまで無脊椎動物では報告されていない神経堤細胞のような「移動能を有する外胚葉系細胞」をマボヤ胚で探索すること、また神経堤分化関連因子のマボヤ胚における発現様式を明らかにすることを目指して研究を実施した。その結果、蛍光色素ラベルしたマボヤ胚神経板境界の細胞をタイムラプス観察することにより、「移動能を有する外胚葉系細胞」をマボヤ胚で発見し、その移動経路を解明した。また、神経堤の形成・分化に関与する因子に相同なマボヤ遺伝子を合計39個クローニングすることに成功した。以上のことから、本年度の目標はおおむね達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、神経堤の進化的起源を探るための重要なカギとなる細胞をマボヤ胚で同定し、多数の遺伝子をクローニングすることに成功した。今後は、マボヤ胚の「移動能を有する外胚葉系細胞」の発生メカニズムを分子レベルで解明することを目指す。次年度は、「移動能を有する外胚葉系細胞」の分化誘導に関与する遺伝子を同定するために、本年度クローニングした神経堤分化関連因子のマボヤ胚における発現を解析する。さらに、この外胚葉系細胞の移動経路を規定する分子メカニズムの解明にも取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた第93回日本生理学会大会への出席を取りやめたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
少額であることから、消耗品費として計上する。
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Research Products
(2 results)