2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K07125
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
日下部 誠 静岡大学, 理学部, 准教授 (40451893)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | リラキシン / イトヨ / 環境浸透圧 / 浸透圧調節 / 量的形質遺伝子座 / 遺伝的分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はイトヨをモデルとしてリラキシンの機能を解析し、脊椎動物におけるリラキシンの生理的意義を明らかにすることである。研究代表者の先行研究により、イトヨのリラキシン(rln)およびその受容体遺伝子は複数存在することが明らかになった。遡河型イトヨにおいて環境浸透圧の変化に応じて、riln3b遺伝子の発現は有意に増加するが、淡水型イトヨでは環境浸透圧の変化に対して、riln3b遺伝子の発現に変化はなかった。この事からリラキシン関連遺伝子が浸透圧調節を制御する神経ペプチドとしての役割が示唆された。この環境浸透圧の変化によるリラキシン遺伝子の発現変化の違いは遡河型と淡水型の遺伝基盤の違いによって生じているかを明らかにするために、量的形質遺伝子座(QTL)解析を用いて体液浸透圧調節に関連する遺伝子座の同定を行い、リラキシン関連遺伝子が浸透圧調節遺伝子座に存在するかを解析した。QTL解析による遺伝子座の同定の後、トランスクリプトーム解析、アミノ酸変異解析、全ゲノムスキャンによって浸透圧調節遺伝子座内に存在する浸透圧調節に不可欠な遺伝子の絞り込みを行った(Kusakabe et al. 2017 Molecular Ecology)。しかしながら、いずれのリラキシン遺伝子も溯河型と淡水型間で高い遺伝的分化を起こした領域には存在しないことが分かった。リラキシン遺伝子の発現の違いはシス領域に変異はあるが強い選択がかかっていない可能性、あるいは別の遺伝子座のトランス作用による可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成28年3月より静岡大学へ異動になり、新しい研究室の立ち上げに若干の時間を要している。また、異なる浸透圧環境に対するリラキシン遺伝子の発現応答が遡河型と淡水型イトヨにおいて異なることがどのような遺伝基盤の違いに起因するかを明らかにするための課題を加えたため、当初予定していた脳地図の作成、ペプチドの合成などに遅れが生じている。しかしながら、上記の研究から得られた浸透圧調節を担う候補遺伝子同定の結果は平成28年度にMolecular Ecologyにアクセプトされた。論文は「Special Issue: MOLECULAR MECHANISMS OF ADAPTATION AND SPECIATION: INTEGRATING GENOMIC AND MOLECULAR APPROACHES」に掲載される論文として選抜された.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度より静岡大学理学部に所属が変わり、平成29年度も研究環境の整備に時間を費やす必要が必要がある。しかしながら、平成29年度より魚を飼育できる環境が整い始めている。脳地図を完成させるために必要な魚の維持をを自分の研究室で行えるようになる目途がたった。そこで、現在大まかに出来上がっている脳地図の詳細を詰めて行く予定である。ペプチド合成に関しては、静岡大学理学部に酵母を用いたペプチド合成系を使っている研究室があることが分かった。平成29年度はその研究室に指導していただきながら、ペプチド合成を試みる。また、魚の飼育環境も徐々に整備されてきたので、CRISPR/Cas9の系を用いた遺伝子操作実験を立ち上げる。CRISPR/Cas9の実験系については、すでに国立遺伝学研究所と打ち合わせを行っている。
|
Research Products
(9 results)