2015 Fiscal Year Research-status Report
イモリ嗅細胞におけるアミノ酸受容体の同定およびシグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
15K07142
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中谷 敬 筑波大学, 生命環境系, 教授 (20125040)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イモリ / 嗅細胞 / シグナル伝達 / アミノ酸応答 / cAMP / IP3 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的に水溶性匂い物質の受容に微絨毛型の細胞が関与し,IP3を2次メッセンジャーとするシグナル伝達経路をもつことが知られている。今回は繊毛型嗅細胞に注目してパッチクランプ法による実験を行い,以下の結果を得た。繊毛型嗅細胞で揮発性匂い物質に対する電流応答が観察されたのに加えて,アミノ酸に対する電流応答が観察された。さらに,それぞれの応答のシグナル伝達のメカニズムを明らかにするため,アデニル酸シクラーゼの活性化剤であるフォルスコリン(forskolin),およびホスフォリパーゼC活性化剤であるm-3M3FBSを投与してその効果を解析した。揮発性匂い物質に対して応答した嗅細胞はすべてフォルスコリンにも応答した。このことから,揮発性匂い物質に対する応答のシグナル伝達経路はcAMPを介する経路であるという従来の知見を確認した。一方,アミノ酸に対して応答した嗅細胞では,フォルスコリンに応答した細胞とm-3M3FBSに応答した細胞の両方が観察された。このことから,アミノ酸に対する応答では,cAMPを介するシグナル伝達経路とIP3を介するシグナル伝達経路の両方が存在することが示唆された。さらに,現段階では1例のみであるが,単一の細胞で揮発性匂い物質とアミノ酸の両方に応答することが観察された。この真偽は来年度以降の実験で検証する。これらの結果から,繊毛型の嗅細胞はアミノ酸にも応答し,そのシグナル伝達経路はcAMP経路およびIP3経路の両方が存在することが示唆された。今年度は,電気生理学的研究の他に,cAMP経路およびIP3経路をもつ細胞の局在を調べる目的で,免疫組織化学法を用いてGolf抗体およびGo抗体で細胞を染め分けた。この結果は次年度に報告する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
パッチクランプ法は技術的に難しいが,今年度は主に経験2年目の大学院生が担当したため,大きな進展は期待していなかった。しかし,予想を超えて順調に進み,これまで分かっていなかった繊毛型嗅細胞のアミノ酸応答をコンスタントに記録できようになり,さらにアミノ酸応答のシグナル伝達メカニズムの一端を明らかにすることができた。当初の予定では2年目くらいに結果が出ることを期待していたので,まださらなる証明が必要とはいえ,1年目に本プロジェクトの目標を達成するめどがついたことは当初の計画以上といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.電気生理学的研究 平成27年度に引き続き,パッチクランプ法を用いてアミノ酸応答を記録し,シグナル伝達メカニズムを調べる。平成27年度はcAMP経路を調べるためにアデニル酸シクラーゼの活性化剤であるフォルスコリン(forskolin),IP3経路を調べるためにホスフォリパーゼC活性化剤であるm-3M3FBSを用いたが,今年度はさらにcAMP分解酵素の阻害剤,IP3チャネルの阻害剤などシグナル伝達に関わる酵素等を薬理学的に操作するとともに,IP3などの2次メッセンジャー候補やCa等を細胞内に直接投与するなどして詳細に調べることにより,シグナル伝達経路を解明する。また,「研究実績概要」に記述したように,揮発性匂い物質とアミノ酸の両方に応答する細胞を1例だけ観察できたので,今年度は匂い物質を投与する装置を改良してこの真偽を確かめるための実験を計画する。
2.免疫組織化学法による研究 電気生理学的研究により,繊毛型嗅細胞のシグナル伝達経路に2種類あることが明らかになった。そこで,まずGolfおよびGoの2種類のGタンパク質抗体を用いて,嗅上皮におけるこれらのGタンパク質の分布を調べる。さらにcAMP経路およびIP3経路に関与するタンパク質・酵素の抗体を用いて,特にIP3経路をもつ細胞の分布・局在を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当該年度の試薬使用量および予想価格が当初の計画を下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度の請求分とあわせて抗体等の比較的高額な試薬の購入に使用する。
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Research Products
(3 results)