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2016 Fiscal Year Research-status Report

種特異的な聴覚情報の脳内表現と性行動発現の脳神経機構の解明

Research Project

Project/Area Number 15K07147
Research InstitutionNagoya University

Principal Investigator

石元 広志  名古屋大学, 理学研究科, 特任助教 (80643361)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2018-03-31
Keywordsドーパミン / 意思決定 / 性行動 / 価値判断 / モチベーション / ショウジョウバエ
Outline of Annual Research Achievements

多くの動物種でメスは求愛の初期過程で交尾を拒否するが、オスの継続した求愛を受けて徐々に交尾の受容へ行動が転換する。この性行動の変遷には、求愛情報の集約に伴って、拒否と受容といった相反する行動を切り替える、段階的かつ並列的な脳神経制御が必要である。しかし、その制御機構の実体となる神経回路や制御様式は未だ多くが謎である。本研究は当該年度において、ショウジョウバエのメスが示す求愛の「拒否と受容」の行動転換に着目して分子遺伝学的な行動解析を実施し、この行動転換を調節制御する責任神経回路を同定することに初めて成功した。
本研究で同定したメスの性行動転換に必要な責任神経回路は、メスの交尾拒否行動を促進的に制御する神経細胞(A)群と、反対に交尾拒否行動を抑制的に制御する神経細胞(B)群で構成されていた。さらに、少数のドーパミン作動性神経細胞群がメスの交尾拒否行動を制御している事、責任神経回路の上流神経として接続している事を明らかにした。この事から、ドーパミンが回路制御の中心的な役割を担うと考えられた。実際に、神経細胞(A)群と神経細胞(B)群の行動制御機能には、それぞれ異なるドーパミン受容体分子(ショウジョウバエには4種類のドーパミン受容体が存在する)が必要であった。以上の事から、性的刺激で惹起されるドーパミン分泌を受けて交尾拒否を強める神経細胞(A)群に対して、並列的にドーパミンシグナルを受けた神経細胞(B)群が抑制制御する、といった神経回路の関係性を明らかに出来た。
当該年度で解明した新規神経回路は、状況に応じて適切な性行動の発現調節を担うと考えられる。昆虫脳に特異な種保存の行動制御システムの理解のみならず、情報を統合して行動を選択する「価値判断」等の新規回路モデルを提供し、他の動物種の脳回路の機能と比較して一般原理を抽出するための新たな研究基盤が本研究で開拓できた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

研究初年度に実施した行動遺伝学的な神経細胞スクリーニングによって、交尾拒否行動を促進的に制御する神経細胞(A)群を同定していた。この発見を元に、神経細胞(A)群を含む神経叢構造体をCa2+センサータンパク質GCaMP6fで標識して、神経細胞群の生理的応答特性を解析した。人工求愛歌をハエに聴かせつつ標識神経細胞の神経応答パターンを記録した結果、標識した神経叢構造体の部分毎に神経応答が上昇する場合や反対に低下する場合が観察できた。この現象は、標識神経叢構造体を構成する神経細胞群毎に機能が異なる可能性を示唆していた。実際に、神経細胞(A)群を内包する神経叢構造体は、レイヤー構造を形成しているため、より詳細にその生理特性を解析するためには、異なるレイヤー構造を形成する異なる神経細胞群の個々の機能を同定し、それら機能的に異なる神経細胞毎に切り分けて解析する必要があると考えた。そこで、標的神経叢構造の各層の個別の神経機能を同定する目的で、層構造毎に適時、分子遺伝学的に抑制して、メスの交尾受容行動を解析した。その結果、神経細胞(A)群とは反対に、交尾拒否行動を抑制的に制御する神経細胞(B)群を新たに発見することが出来た。この発見により、神経細胞(A)群と神経細胞(B)群、この両方に連絡するドーパミン作動性神経細胞群(片半球に6細胞)とで形成される新たな神経回路構造が浮かび上がり、さらに、その機能に必要な受容体分子と回路内に内包する抑制制御機構を明らかに出来た。オスの性的接触で惹起されるメスのドーパミンシグナルが交尾拒否行動を促進する、といった一方向的で単純な行動制御ではなく、交尾拒否と並行して、この拒否行動を抑制する制御が加わる事で、情報集積によって行動転換する複雑な行動制御を可能にしていると考えられる。該当年度においてこのような新規の神経回路モチーフを新たに発見することに成功した。

Strategy for Future Research Activity

本研究で、ドーパミンで駆動される、少なくとも2種類の神経細胞グループを内包する神経叢構造体がメスの交尾行動の転換を制御することを初めて明らかにした。この少数のドーパミン神経細胞群を起点とする神経細胞(A)群、神経細胞(B)群の関係性は、入力シグナルに対して遅延出力を生み出すフィードフォワード構造に類似していた。この事は、メスの性的モチベーションの高まりにオスの求愛アプローチが一定時間必要である実際の観察事実によく合致する。今後は、本研究で明らかにした神経回路の動作原理を単一神経細胞レベルでさらに追究するために、当初から計画していた該当神経細胞の生理応答特性を明らかにする。

Causes of Carryover

ショウジョウバエの歩行活動と連動して脳神経活動を測定するための装置開発が遅れたため。

Expenditure Plan for Carryover Budget

脳神経活動と行動出力を同時記録するための装置の開発費用に用いる。

  • Research Products

    (2 results)

All 2016

All Presentation (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Presentation] A reciprocal modulation of courtship decision-making via dopaminergic signals in Drosophila2016

    • Author(s)
      石元広志, 上川内あづさ
    • Organizer
      第4回 神経回路合同研究会
    • Place of Presentation
      名古屋大学
    • Year and Date
      2016-10-11 – 2016-10-11
  • [Presentation] ドーパミン神経制御による求愛行動の意思決定2016

    • Author(s)
      石元広志, 近藤佳子, 上川内あづさ
    • Organizer
      第39回 日本神経科学大会
    • Place of Presentation
      パシフィコ横浜
    • Year and Date
      2016-07-20 – 2016-07-22
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2018-01-16  

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