2017 Fiscal Year Research-status Report
分裂期終期染色体上に存在するLamin A 相互作用因子の同定
Project/Area Number |
15K07161
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
廣瀬 富美子 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 准教授 (60208882)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 核ラミナ / ヘテロクロマチン / 分裂期 / 核膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では分裂期の最後に起こる核ラミナの再構築を制御する分子やそのメカニズムの解明を目的としている。核ラミナの構成因子であるラミンAの脱リン酸化が核ラミナ再構築の引き金になるため、分裂期終盤にラミンAと相互作用しラミンAの脱リン酸化を行う酵素を探した。 昨年度までに、分裂期特異的なリン酸化を受けたラミンAを脱リン酸化する酵素としてRepoMan/PP1 脱リン酸化酵素を同定した。この脱リン酸化酵素は分裂期後期から染色体に集積することが知られているが、ラミンAが染色体上に集積し、脱リン酸化されるのは分裂期終期である。そこで今年度は、RepoMan/PP1とラミンAの相互作用が分裂期終期にのみ起こるのは何故かという問題に挑んだ。その結果、RepoMan/PP1 とラミンAの相互作用はRepoManたんぱく質のSUMO化とラミンA分子内に存在するSIM(SUMO interacting motif)に依存していることを、RepoManとラミンAの各種変異体を発現させた細胞を用いた生化学実験や顕微鏡観察により証明した。さらに、RepoMannoSUMO化は分裂期終期の短時間のみに起こることを同調培養した細胞を用いた免疫沈降実験、蛍光たんぱく質との融合たんぱく質発現系を用いたFRET解析などにより示唆することができた。これにより、分裂期の終わりに起こるラミンAの脱リン酸化と核ラミナの形成が厳密に時空間的に厳密に制御されていることを示唆することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的としていたラミンAと分裂期染色体上で相互作用しラミンAの分裂期特異的リン酸化を除く脱リン酸化酵素を明らかにすることができた。さらに、分裂期終盤のおよを15分という短い時間にのみ、ラミンAが脱リン酸化を受けられる分子メカニズムを提唱できた。以上から、概ね、研究の目標にあげた結果を達成できたと考える。ただし、論文作成に当たって細かな部分で確認すべき点が残っている。例えば、RepoManたんぱく質の一過性のSUMO化については定量的なデータである必要があり、そのためには何度も同じ実験を繰り返す必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
核ラミナの再構築を調節する他の因子や反応については手付かずである。特に今回は核ラミナの構成因子のラミンAの脱リン酸化の制御因子に絞り解析を行ったが、核ラミナのもうひとつの構成因子ラミンBについては不明である。ラミンAとよく似た調節機構があるのか、独立した他の調節を受けるのかは今後の課題である。 また、今回の研究結果から、RepoMan たんぱく質の一過性のSUMO化が分裂期終盤の核ラミナの再構築のきっかけとなることを結論したが、RepoManのSUMO化についてSUMO化酵素および脱SUMO化酵素、さらには調節因子については未解明である。一般的にたんぱく質のSUMO化の寿命を決めるのはSUMO化酵素と脱SUMO化酵素のバランスで決まると考えられてはいるが、明確に証明されてはいない。今後、RepoManのSUMO化と脱SUMO化を行う因子を同定し、超短寿命のSUMO化を可能にする分子メカニズムを明らかにしたいと考える。
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Causes of Carryover |
研究計画は順調に進捗したが、論文作成に必要な追加実験として抗体や細胞培養試薬などが必要となった。さらに、論文の英文校正のための謝金として使用するつもりである。
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Research Products
(2 results)