2017 Fiscal Year Annual Research Report
Studying aquatic adaptation of amniotes based on the comparative genomics of sea snakes
Project/Area Number |
15K07184
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岸田 拓士 京都大学, 野生動物研究センター, 特定助教 (40527892)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウミヘビ / デノボアセンブル / 感覚受容体遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウミヘビ類はコブラ科に属する海産のヘビ類の総称であり、産卵のために陸地を必要とする両棲のエラブウミヘビ族Laticaudiniと、胎生で生涯を海中で過ごす海棲のウミヘビ族Hydrophiiniの、二つのグループに分類される。両棲種と海棲種の両方が現存する唯一の海産羊膜類であるため、羊膜類の海洋環境への適応進化の研究モデルとして注目されている。 本プロジェクトでは、エラブウミヘビ族およびウミヘビ族からそれぞれ2種を選んでゲノム解読を行った。これら4種のゲノム解読を行う上で、使用するシークエンサーやDNAライブラリなどを種ごとに変えることで、現時点で一般に行われているゲノムのデノボアセンブルの各手法の評価も行った。また、これらゲノム解読を行った種のうち、エラブウミヘビ族およびウミヘビ族各1種の各組織のRNAも抽出して網羅的な解読を行った。 本研究の結果、陸産のヘビ類と比べて、ウミヘビ類は化学感覚に必要とされる受容体遺伝子を多く失っていることが解明された。ヘビ類は一般に嗅覚がよく発達している。ヘビの嗅覚は大きく二つの神経系:鼻腔の嗅上皮を介した主嗅覚系と鋤鼻器官を介した鋤鼻嗅覚系とに分けられる。エラブウミヘビ族、ウミヘビ族ともに、主嗅覚系で使われる受容体遺伝子と鋤鼻嗅覚系で使われる受容体遺伝子の両方が、ゲノムから大幅に失われていた。エラブウミヘビ族の嗅覚受容体遺伝子はまだ各組織において発現しており、機能を保持していると推測されたが、陸地を必要としないウミヘビ族においては、嗅上皮において一切の嗅覚受容体遺伝子の発現が見られなかった。こうした化学感覚受容体遺伝子の喪失は鯨類の進化でも確認されており、羊膜類の海洋環境への適応進化に伴う普遍的な現象だと考えられる。 本研究の成果は、現在論文にまとめて執筆中である。近日中に、専門誌への投稿を予定している。
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Research Products
(5 results)