2015 Fiscal Year Research-status Report
ライフヒストリーを基軸とした,中近世日本人骨の生物考古学的研究
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15K07241
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
長岡 朋人 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (20360216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 みき子 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80212554)
蔦谷 匠 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (80758813)
森田 航 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (20737358)
川久保 善智 佐賀大学, 医学部, 助教 (80379619)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 齲蝕 / 未成人骨 / 生物考古学 / 江戸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,これまでほとんど焦点が当たらなかった中近世日本人のライフヒストリーについて,子どもに重点を置きながら分析を行うことである。今年度の成果の一つは未成人骨の齲蝕の研究である。今年度のは,東京都一橋高校遺跡(17世紀)から出土した江戸時代人骨における乳歯の齲蝕を調査した。資料は,未成年人骨115体の年齢群を3つに分け,年齢群1は乳歯が完全に萌出していない段階で0.5歳~2歳,年齢群2は乳歯が完全に萌出しているが永久歯が未萌出な段階である3~5歳,年齢群3は永久歯と乳歯と混在している状態で6~10歳である。その結果,年齢群1では268本の乳歯のうち32本に齲蝕を認め,齲歯率は11.9%であった。また,年齢群2では409の乳歯のうち54本に齲蝕を認め,齲歯率は13.2%であった。年齢群3では166本の乳歯のうち13本に齲蝕を認め,齲歯率は7.8%であった。全体では843本の乳歯のうち99本に齲蝕を認め,齲歯率は11.7%であった。これは,先行研究で示された福岡県宗玄寺遺跡の江戸時代武士(17.1%)や京町遺跡の江戸時代庶民(26.9%)より有意に少なかった。次に,齲蝕部位に関しては,いずれの年齢段階も咬合面や隣接面に齲蝕が集中し,歯の複数部位に齲蝕を認めた宗玄寺遺跡や京町遺跡とは対照的であった。すなわち,齲歯率と齲蝕部位から見ると,一橋高校遺跡出土人骨の齲蝕は福岡県の比較資料より軽度である。一橋高校遺跡の人骨は庶民と考えられる資料であるが,江戸時代人骨の齲歯率には地域差が存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データの収集は順調に進み、さっそく成果が出始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
関東や近畿の江戸時代人骨の整理と分析を進め、次年度内には台帳作成と論文執筆を行いたい。
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Causes of Carryover |
分析資料が膨大であるため予定をしていた分析を次年度に変更した。また,実験用消耗品の見積もりのタイミングが遅れ,納品予定日などが海外出張と重なってしまい,事務手続きが必要な期日までに完了できない恐れがあったため,それら消耗品の購入を次年度に繰り越しとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未発表資料のデータの分析と成果の公表で次年度使用をする。また,消耗品が必要であった部分のサンプルの測定が終わっていないため,古人骨からのコラーゲン抽出および測定に要する消耗品費として,前年度から繰り越した金額をあてる。
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Research Products
(15 results)