2018 Fiscal Year Research-status Report
ライフヒストリーを基軸とした,中近世日本人骨の生物考古学的研究
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15K07241
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
長岡 朋人 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (20360216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 みき子 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (80212554) [Withdrawn]
澤藤 匠 (蔦谷匠) 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 生物地球化学研究分野, ポストドクトラル研究員 (80758813)
森田 航 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (20737358)
川久保 善智 佐賀大学, 医学部, 助教 (80379619)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生物考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:本研究では、日本人の死亡年齢構成の時代変化と気候変動の関係を探った。中世終わりから江戸時代にかけて小氷期による寒冷化が世界中で起き、ヨーロッパでは低身長化に見られるように健康状態が悪化したという。本研究では、弥生時代から江戸時代にかけて、古人骨の死亡年齢構成を復元することで、気候変動の影響が強かった中世から江戸時代の健康状態の変化を追跡した。 方法:指標としたのは仙腸関節にある腸骨耳状面であり、若年個体では滑らかであるが高齢になると骨棘や孔が多く現れる。バックベリーらの腸骨耳状面に基づく死亡年齢の推定方法は、腸骨耳状面の溝、テクスチャー、骨棘、孔から1~7の7段階(数字が小さいほど骨が若い状態である)に分類し、その後年齢に対応させるという手順をとる。弥生時代、鎌倉・室町時代、江戸時代の古人骨を資料に、腸骨耳状面段階の構成を直接比較した 結果:本研究では、弥生時代から江戸時代にかけての死亡年齢構成を復元し、時代による健康状態の変化を調査した。その結果、中世において短命のピークを迎え、江戸時代にかけて徐々に回復する傾向が明らかになった。 考察:死亡年齢構成の時代推移と寒冷化の傾向は一致しなかった。その理由として、都市の衛生環境の改善や農耕技術の発展が挙げられる。しかし、その結果は気候変動が日本人の健康状態に影響を与えていないわけではない。江戸時代前期はストレスマーカー(クリブラ・オルビタリア)の頻度が最も高く低身長を特徴とする。死亡年齢構成と寒冷化が一致しない理由としては、むしろ自然災害や戦乱などにより、人骨の死亡年齢構成が若齢化したことが想定できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的はほぼ達成したため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の継続をし、論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
研究分担者が育児休暇を取得したため計画の延長をお願いした。次年度はデータの追加収集と論文執筆を行う。
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Research Products
(8 results)