2015 Fiscal Year Research-status Report
頭部CT画像の解析による頭蓋・顔写真スーパーインポーズ法および復顔法の高度化
Project/Area Number |
15K07249
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
今泉 和彦 科学警察研究所, 法科学第一部, 室長 (00356148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 慶 科学警察研究所, 法科学第一部, 研究員 (10649528)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 復顔法 / 3次元形状解析 / 頭部CT画像 / 相同モデル / 頭蓋骨 / 法人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
殺人事件や身元不明事案等で白骨死体が発見されると、各種骨資料について性別・年齢・身長・死後経過年数などが検査される。これら検査結果を元に該当者と思われる人物が浮上した場合、頭蓋骨と生前の顔写真とを重ね合わせるスーパーインポーズ法による検査が行われ、両者が同一人のものかどうかが判断される。一方、該当者が浮上しない場合には頭蓋骨からの復顔が試みられる。これら2つの検査に必要な基礎データは共通で、軟部組織の厚さ、顔面の各パーツ(眼、鼻、口、耳など)と頭蓋骨の各部位(眼窩、梨状口、口裂、歯、外耳孔など)との位置関係等が頭部単純X線撮影で検討されてきた。近年、CT撮影技術が進歩し、死因究明のための死後CT画像も病院や大学に蓄積されてきている。本研究はこれらデータと、被験者を募って撮影する精細な頭部CT画像を検討資料とし、3次元的に上記2手法の高度化を図るものである。平成27年度には、CT画像から取り出した頭蓋骨に対ついてゴム膜様のもので表面を覆うシミュレーションを行い、これらモデルに対して解剖学的な対応がある相同メッシュを張り込むツールを開発した。この相同モデルの各メッシュ点と皮膚表面間の距離を計測し、2名分の平均値を任意の頭蓋骨から作製した相同モデルに適用することで、3次元的な復顔が可能となった。ただし、ここで用いた軟部組織厚データは、現時点で男性2名から得たものにすぎず、次年度以降はより多くの被験者の頭部CT撮影を実施し、基礎データの充実を図る。併せて、過去に行った研究成果をもとに、頭蓋骨から得られた3次元復顔像に対して加齢・体重変化を加えて複数パターンの復顔像を作製できるようにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本人成人男性2名から得た頭部CT画像から頭蓋骨と頭部表面の3次元形状を得て、顔面各部と頭蓋骨各部との位置関係と頭部全体の軟部組織厚を検討した。検討にあたっては、頭蓋骨の眼窩、梨状口等、解析上障害となる窪んだ部分を一定の設定条件下で覆うことのできるツールを用意し、頭蓋骨をあたかもゴム膜で包んだかのような形状に変換した。この形状に対して各メッシュ頂点が解剖学的に対応する相同モデルを作製し、頭蓋骨中心点より各メッシュ頂点に投射した直線において、頭蓋骨から頭部表面までの距離を計測、平均化した。ここまでの開発により、任意の頭蓋骨を相同モデル化し、各メッシュ頂点に平均軟部組織厚を適用する3次元的な復顔が可能となった。そこで、頭蓋骨標本15体分についてCT撮影を行い、得られた3次元形状に対して実際に3次元的な復顔を試みたところ、得られた復顔像は、頭蓋骨に認められる各種形態特徴、すなわち縦横幅、上下顎の前方への突出比、眉弓の突出程度、下顎角の発達、オトガイ部下縁の形状等に関する特徴を3次元的に良く表現していた。以上により、平成27年度に予定した研究計画はほぼ全て達成され、従って、研究の進展はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
任意の頭蓋骨からの3次元的復顔法の基本的手法は平成27年度に開発されたので、平成28年以降は、現状2名からのみ得ていた軟部組織厚等の基礎データを、より多人数から得ることで信頼性の向上をめざす。そこで、H28年度には頭部CT撮影被験者を募りデータの充実に特に力を注ぐ。併せて、多人数データに基づいて作製された復顔法が、本来の顔の形状をどれほど再現できているかについて、本来の顔と復顔像間で面間距離を測定する等の検証作業を進め、誤差の生じやすい部位を把握した上で復顔像作製工程を調整、最適化を行う。 さらに、H28年度後半からH29年度前半(最終年度)にかけた検討項目として、以前当研究室で行った研究で得られた、加齢や体重変化による顔の形状変化に関するパラメータを当復顔システムに盛り込み、任意の頭蓋骨から得られる復顔像について、加齢変化、体重変化を加えた複数パターンを出力できるようにする。
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Causes of Carryover |
平成27年度に物品費として支出する予定であった、「頭蓋骨・顔三次元形状解析ツールの開発委託」と、その他経費として予定していた「ヒト頭部CT画像撮影料金」について、被験者を募ってのCT画像撮影にかかる医学部研究機関との共同研究体制の構築と倫理審査に若干の遅れがあり、年度内に資料の収集に取りかかることができず、また、解析ツール開発についても本格的な仕様検討に至らなかった。この遅延については、27年度末に共同研究体制の確立と倫理審査での承認を終えており、平成28年6月にCT画像撮影を開始し、実データによる検討を伴うツール開発を委託する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の未使用分については、使用の障壁となっていた倫理審査等の問題が解決したので、平成28年度の早期に、未使用の「頭蓋骨・顔三次元形状解析ツールの開発委託」と「CT撮影料」を使用する。また、平成28年度には研究成果の一部を海外で報告するための旅費として当該助成金を使用する予定。
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Research Products
(1 results)