2016 Fiscal Year Research-status Report
青枯病菌エフェクターの宿主因子を介した活性制御機構の解明
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15K07320
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Research Institution | 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所 |
Principal Investigator |
向原 隆文 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所, その他部局等, 専門研究員 (80344406)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エフェクター / グルタチオン / チオレドキシン / 青枯病菌 / 植物免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベンサミアナタバコの一過的発現系を利用して、青枯病菌のRipAYエフェクターを植物細胞内で発現させた。その結果、RipAYを発現させると植物細胞内のGSH濃度が著しく減少することが明らかとなり、RipAYはGSH合成系が正常な状態でも植物細胞内のGSHプールを枯渇させることができるほど強力なGSH分解活性を持つことが明らかとなった。RipAYの発現により細胞内のGSH濃度が低下した植物本葉ではflg22エリシター処理による活性酸素種(ROS)の産生や病害抵抗性関連遺伝子の発現が著しく抑制されることを見いだした。GSH分解活性を失ったRipAY変異体ではこのような細胞内GSH濃度の現象や自然免疫応答の抑制は観察されなかった。これまでにシロイヌナズナのpad-2変異体のようなGSH低蓄積変異植物では病原菌に対する抵抗性が大きく低下することが報告されているが、上記の結果から、青枯病菌のRipAYエフェクターは植物の自然免疫系で重要な役割を果たしているGSHを特異的に分解することで植物の病害抵抗反応を抑制する新奇な病原エフェクターであることが明らかとなった。宿主GSHを標的とする病原体の病原因子はRipAYが初めての例である。さらに、質量分析装置を用いて、RipAYがグルタチオンをCys-Glyと5-oxoprolineに分解するγ-glutamyl cyclotransferaseであることを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、本研究の最大の課題であったRipAYの酵素活性と病原菌の植物感染の関連の解明に取り組み、RipAYが植物のGSHを標的として自然免疫を抑制するという新奇作用機序を持つ病原因子であることを証明できた。
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Strategy for Future Research Activity |
強力なGSH分解酵素であるRipAYが病原菌の細胞内で不活性型で維持されることは、GSHが病原菌にとって非常に重要な役割を果たしていることを強く示唆する。今後は、病原菌のストレス耐性や生育におけるGSHの役割を解析し、植物細胞内特異的なGSH分解の生物学的意義を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度の研究に必要な試薬を購入するための予算を繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度当初に使用する予定。
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