2016 Fiscal Year Research-status Report
新規xenobiotics ABCトランスポーターの構造機能と生物学的意義の解析
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15K07369
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
矢嶋 俊介 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (90301548)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
Microbacterium sp. HM58-2株は、非天然化合物であるヒドラジド化合物を唯一の炭素源として生育可能な細菌として土壌から単離された。その代謝メカニズムの解明は、細菌の環境適応能力の解明と応用につながることが期待される。 平成27年度に本菌のゲノム解析を行い、代謝酵素であるヒドラジダーゼを含むオペロンを構成する一連の遺伝子群を明らかにしたが、その成果を平成28年度Genome Announc.に論文発表した。そのゲノム解析の結果を元に、Microbacterium sp. HM58-2株におけるオペロン遺伝子の発現を確認したところ、ヒドラジド化合物により、ヒドラジダーゼ、トランスポーターの発現が誘導されることが明らかとなった。すなわち、これらの遺伝子群がヒドラジド代謝に重要であることが明らかとなった。また、その誘導機構を明らかにするため、オペロン上流に位置する転写因子についてX線結晶構造解析を行い、Acta Crystallography Fにその成果を発表した。明らかとなった構造は、今までに発表されているファミリー内の転写因子とは異なるサブユニット間総合作用により複合体を形成していた。このことは、1分子センサー型転写因子として、基質結合の有無によりコンフォメーション変化が起こることを示唆していると考えられた。また、ヒドラジドを分解するヒドラジダーゼについてもX線結晶構造解析を行い、基質特異性を発現する要因について明らかにした。この成果は、Biochem Biophys Res Communに発表した。ヒドラジダーゼはアミダーゼファミリーに属する酵素であるが、非保存領域に存在する限られた数のアミノ酸が重要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に精製系の構築を確認できたトランスポーターの基質結合サブユニットについて、結晶化を試みた。またN末端の欠失変異体を複数作成し、発現、精製度の向上、結晶化の可能性を探った。その結果、結晶が得られたものの、再現性を得るには至っていない。 ATP結合サブユニットについては、平成27年度に作成した抗体を使用し、組換え体蛋白質が発現していることを確認した。しかし、発現量が少ないため、培養条件を検討し、精製後CBB染色によりバンドを検出できる量を得ることに成功した。 トランスポーターの発現に関わる転写因子と、ヒドラジドを特異的に分解する酵素のX線結晶構造解析を行い、2つの論文発表を行った。これらにより、ヒドラジド代謝メカニズムの一連の解明が進んだと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、基質結合サブユニット、ATPaseサブユニット、膜貫通サブユニットの結晶構造解析を目指して引き続き研究を進める。基質結合サブユニットとATPaseサブユニットについては、結晶化のスクリーニングを進め、膜貫通サブユニットについては、大量発現系の構築を進める。 また、28年度に立体構造を明らかにした転写因子は1分子センサー型であることから、実際にhydrazideあるいは、その分解物を結合した構造を明らかにし、hydrazideによる遺伝子発現メカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成28年度の予算については、適正な執行に努めてきた。その結果、研究の進捗もほぼ予定通りであり、試薬の割引等で年度末に端数を生じた。そのため、次年度に追加することにより、次年度の研究がより進むと考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の未使用額は、平成29年度の計画において必要な試薬の購入に充てる予定である。これにより、予定している実験の試行回数を増やすことで、研究のさらなる進捗が期待される。
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Research Products
(4 results)