2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K07376
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
八代田 陽子 国立研究開発法人理化学研究所, 吉田化学遺伝学研究室, 専任研究員 (60360658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植木 雅志 国立研究開発法人理化学研究所, 伊藤ナノ医工学研究室, 専任研究員 (90312264)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分裂酵母 / 代謝 / 細胞間情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
酵母には利用しやすい窒素源(アンモニア、グルタミン酸等)を含む環境下では、利用しにくい窒素源(分岐鎖アミノ酸等)の利用・取り込みに必要な酵素やトランスポーターの発現が抑制される窒素源カタボライト抑制という機構が存在する。我々は分裂酵母の分岐鎖アミノ酸要求性変異株(eca39Δ株)が示す特徴的な適応生育現象を見出したことより、窒素源カタボライト抑制を解除する機能を示す分泌ファクターを同定し、窒素源シグナル因子(Nitrogen Signaling Factor, NSF)と命名した。今年度はNSFの受容体および受容後のシグナル経路に関与する因子のスクリーニングを行った。当初、eca39Δ株を試験株として分裂酵母の約3,000株の遺伝子破壊株との掛け合わせによる二重破壊株を作製する予定だったが、eca39Δ株の生育が遅く取り扱いにくいため、eca39Δ株と同様に適応生育現象を示すロイシン要求性変異株(leu1株)を試験株としてスクリーニングを行った。選抜された遺伝子の中には膜融合や小胞輸送に関与するSNAREタンパク質をコードする遺伝子やヒストンアセチル化酵素の複合体サブユニットをコードする遺伝子が含まれていた。これらはNSF取り込み後のシグナル伝達に関与することが考えられる。また、野生株の近傍にて適応生育したeca39Δ株およびNSF存在下で適応生育したeca39Δ株を用いてマイクロアレイ解析を行い、適応生育後に転写レベルの変化する遺伝子を同定した。さらに、分泌ファクターの生産条件を検討した。異なる窒素源を含む最小培地で野生株を培養し、その培養上清のeca39Δ株回復能を調べたところ、アンモニアよりもグルタミン酸を含む培地で培養した野生株の培養上清において高い活性が見られた。また、培養時の通気量が分泌ファクターの生成に影響をおよぼすこと、定常期の培養上清の活性が高いことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分泌ファクターNSFの取り込み後の作用機序に関与する因子を、遺伝学的スクリーニングを利用し同定した。加えて、NSFの作用機序を明らかにするためにNSF存在下で適応生育したeca39Δ株において転写レベルの変化する遺伝子を同定した。これらの情報は作用機序解析を進めるうえで非常に重要な知見となる。また、分泌ファクターの生産条件も検討した。以上のことより、本研究課題は計画通り順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度の実験結果をもとに、分泌ファクターNSFの詳細な作用機序解析に取り組む。NSFの受容体をまだ同定できていないことから、受容体候補(Gタンパク質共役受容体、二成分制御系など)について、それぞれ個別にNSFと相互作用があるかどうかを遺伝学的/生化学的手法を用いて調べる。また、分裂酵母が分泌するNSFの他の微生物への影響を確認し、NSFの生物学的意義について検討する。
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Causes of Carryover |
当初、eca39Δ株を試験株として分裂酵母の約3,000株の遺伝子破壊株との掛け合わせによる二重破壊株を作製する予定だったが、ロイシン要求性変異株(leu1株)を試験株とするスクリーニングに変更した。よって、すでに所有しているleu1変異バックグラウンドの約3,000株の遺伝子破壊株を用いたので、掛け合わせに必要な消耗品(プレート、試薬等)の購入が必要なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に行う詳細な作用機序解析に充てる予定。
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