LiBr水溶液をセルロース溶剤として用いた新規な再生セルロース材料の開発

2015 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K07506
• Research Institution: Kyoto University
• Principal Investigator: 木村 聡 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (00420224)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 和田 昌久 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40270897)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: セルロース / LiBr / 多孔性 / ゲル / クロマトグラフィー

Outline of Annual Research Achievements

当該年度では、セルロース系のナノ多孔性ゲル状微粒子をLiBr水溶液溶解セルロースから調製することを試みた。ナノ多孔性ゲル状微粒子は、クロマトグラフィー充填材や吸着/徐放剤として有用であり、セルロースを用いることで強度の高いゲル微粒子の開発が期待される。真球状セルロース微粒子を得るため、LiBr溶解セルロース液を高温下でエマルジョン化し、冷却によるゲル化、LiBrを洗浄除去することで再生セルロースゲルを調製できた。エマルジョン化に使用する界面活性剤、セルロース仕込み量を変化させることで、粒径や比表面積の異なる真球状セルロースビーズを調製できることがわかった。調製条件の異なるセルロースビーズについて、平均粒径100 μmのセルロースビーズを使用して、サイズ排除クロマトグラフィー充填材としての性能評価を行った。分子量スタンダートとしてデキストランを使用し校正曲線を作成した。分子量3,000から150,000の標準試料について、セルロース濃度2%程度のセルロースゲルビーズにおいて、直線性の高い校正曲線を得ることができ、クロマトグラフィー充填材として高い性能を有することがわかった。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

既報の方法を参考にwater in oilエマルジョン法を利用した結果、LiBr溶解セルロースから真球状のセルロースビーズを順調に調製できた。また、比較的程分子量のセルロース原料を使用することで、セルロース溶液のハンドリング性も良く、真球状化が容易だったと考えられる。本研究課題では、種々の多孔性を有する高強度なセルロースゲルの調製も重要な課題としている。今年度では、高分子量セルロースの溶解に関する攪拌条件や溶解時間に関する予備実験を行い、各種データを取得することができた。

Strategy for Future Research Activity

これまでに、セルロース系のナノ多孔性ゲル状微粒子の真球状化を達成でき、分子量スタンダードの限界排除データから、このゲルの細孔径分布は3-17 nm程度と見積もられた。次年度では分子量の異なるセルロースを原料とすることでサブナノまたはサブミクロンオーダーの細孔分布を有する新規なセルロースゲルの調製を目指す。そこで高分子量か低分子量のセルロースの調製をまず調製する。高分子量セルロースは綿やバクテリアセルロースを調製し、程分子量セルロースは木材パルプの酸加水分解物を調製する。高分子量セルロースの溶解には強力な攪拌装置を必要とするが、当該年度にすでに導入し、予備実験を進めている。

(次年度使用額が生じた理由と使用計画)
当該年度では、セルロースゲルのビーズ化の条件検討を集中的に行ったこと、実験のスケールダウンを行った結果、計画当初に比べて試薬類の種類や使用量が少なかったため、繰越を計上した。次年度、分子量の異なるセルロース原料の調製を計画しており、それらの分子量測定に必要な試薬類および消耗品の購入に今年度の繰越額を充てる予定である。

Causes of Carryover

当該年度では、セルロースゲルのビーズ化の条件検討を集中的に行ったこと、実験のスケールダウンを行った結果、計画当初に比べて試薬類の種類や使用量が少なかったため、繰越を計上した。

Expenditure Plan for Carryover Budget

次年度、分子量の異なるセルロース原料の調製を計画しており、それらの分子量測定に必要な試薬類および消耗品の購入に今年度の繰越額を充てる予定である。