2015 Fiscal Year Research-status Report
変態期ヒラメで左右非対称に発現する遺伝子群の単離と甲状腺ホルモン制御機構の解明
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15K07571
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横井 勇人 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40569729)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 発生 / 次世代シーケンス解析 / 変態 / 異体類 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒラメ・カレイ類は左右対称な仔魚として成長し、変態期に左右非対称な体制へと劇的に変化する。申請者はこれまでに次世代シーケンサーを用いた遺伝子発現プロファイル解析により、変態初期の頭部微小組織サンプルと変態後期の皮膚・筋肉サンプルの2つのサンプルについて、有眼側と無眼側で発現強度の異なる遺伝子を網羅的に単離した。次世代シーケンサーを用いた発現プロファイル解析は、ゲノム情報のない非モデル生物にも応用可能であり、発現量の異なる遺伝子を網羅的に且つ迅速に単離するのに最適な方法であるが、偽陽性の混入が避けられないという問題点がある。本研究ではこの問題を軽減するために、それぞれの実験区について複数の反復サンプルによる統計処理を行っているが、初年度はこれら”ドライ”な実験により得られたデータを”ウェット”な実験によって検証する研究を進めた。具体的には、RNA-seqにより得られた候補遺伝子をRT-PCRによりクローニングし、切片in situ hybridiztion (SISH)により発現解析を行って、実際に変態期ヒラメの生体内で左右非対称に発現しているかどうか組織レベルで検証を行った。また発現量が少ない遺伝子については、RT-PCRにより検証した。これまでに変態初期のサンプルについてトップ5の遺伝子を、変態後期のサンプルについては、特に色素胞分化に関与する遺伝子に着目して解析を進めている。色素胞分化関連遺伝子としては、dhfrなど色素胞分化の新規マーカー遺伝子として利用できそうな遺伝子も単離された。gchなどこれまでにマーカーとして使われてきた遺伝子との関係についても解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シーケンサーを用いた解析で単離された候補遺伝子の、生体内における左右非対称発現の検証実験について、初年度はSISHによる実験を行うことを計画した。変態初期のサンプルについては、発現差の大きかったトップ5の遺伝子をクローニングし、SISHによる解析を実施した。これらは発現強度が弱かったため、実際にSISHにより組織レベルで左右非対称な発現を確認できた遺伝子はil1rl1のみであるが、それ以外の遺伝子については検出感度の高いRT-PCRにより、ドライな実験を追認する結果を得ることができた。変態後期のサンプルについては、有眼側で強い遺伝子の多くに見られた色素胞分化関連遺伝子に着目し、クローニングに続いてSISHによる組織レベルの解析まで順調に進んでいる。これまで色素胞分化過程について解析されていない遺伝子の中には発現強度が強い数個の遺伝子が含まれ、これらは色素胞分化のマーカーとして有用であると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き、候補遺伝子のクローニングとSISHによる遺伝子発現解析を進める。これまでの実験から、SISHで検出可能な遺伝子発現レベルについて、大まかな検出限界(RPKM)が分かってきたので、今後はその数値を参考にして、検証を行う遺伝子を選抜する。発現強度の弱い遺伝子については、RT-PCRなどにより検証を進める。変態初期のサンプルについては、あるp値を閾値として該当するすべての候補遺伝子の解析を完了することを目指す。変態後期のサンプルについては候補遺伝子が多数に及ぶため、組織発現解析の結果を考慮して第1期の区切りを設ける。 変態初期、および後期のサンプルそれぞれについて、異なったパラメーターでアッセンブルしたデータがあるので、それらを合わせて全体で検証すべき遺伝子を総括し、そこまでのデータを合わせてヒラメ変態の遺伝子発現プロファイル解析として第一報をまとめることを目標とする。 また今年度から国際共同研究加速基金の援助受けて共同研究を始めるため、関連分野からのフィードバックを参考にして臨機応変に研究の方向性を検討する。
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Causes of Carryover |
設備備品として購入したサーマルサイクラーが、期間限定値引きにより当初予定していたよりも15万円ほど安価で購入できたこと、及び、クローニングする遺伝子の数と実験試行回数が当初の想定よりも少数で完了したことにより、分子生物学実験に使用する試薬類やプラスチック器具類の購入が少額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画よりも多くの候補遺伝子について、クローニングとSISHによる組織発現の解析を実施するため、分子生物学実験に使用する試薬類やプラスチック器具類が多く必要となる。次年度使用額は分子生物学実験に使用する物品の購入に使用する。またSISHの処理能力を上げるため、インキュベータの購入を計画している。
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Research Products
(19 results)