2016 Fiscal Year Research-status Report
水田土壌の保全および汚濁負荷抑制に向けた水田土壌の再懸濁過程の解明
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15K07644
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
松井 宏之 宇都宮大学, 農学部, 教授 (30292577)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 懸濁物質収支 / 水田法面 / 懸濁物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,(1)営農水田における懸濁物質収支の観測および懸濁物質の粒度分布の空間的変化,(2)営農水田における田面水の濁度の連続観測,(3)造成水田における水田法面(溝畔)からの懸濁物質流出量の観測を行った。 (1)営農水田における懸濁物質収支の観測では,宮城県名取市の水田群を対象として,懸濁物質流入量,懸濁物質流出量ともに自記水位計および濁度計を用いて連続観測し,5月から9月上旬までの灌漑期に実施した。また,同地区を対象として,適時,採水を行い,懸濁物質の粒度分布の空間的変化を把握した。収支観測の結果から,代かき田植期には一定量の懸濁物質の流入があり,灌漑期全体として収支が均衡する可能性があることが示唆された。また,粒度分析の結果から,流入水中に含まれる懸濁物質の粒度分布と流出水に含まれる懸濁物質の粒度分布にはあまり変化が見られないことが示唆された。 (2)営農水田における田面水の濁度の連続観測では,昨年度の観測方法の不備を踏まえ,測定を行ったものの,2台の濁度計がほぼ同時に故障したことに伴い,十分な結果を得るには至らなかった。 (3)造成水田における(溝畔)からの懸濁物質流出量の観測では,昨年度同様に異なる二つの法面にセンチピードグラスによる植生区,雑草管理区,雑草未管理区,裸地区,背後に水田のない植生区,裸地区を設定し,自然降雨による懸濁物質流出量を測定した。その結果,勾配が大きくほど懸濁物質流出量が多いこと,裸地区では懸濁物質流出量が多く,その他の植生区,雑草管理区,雑草未管理区では大きな差が認められなかった。また,背後に水田のない試験区では懸濁物質量が少なかったものの,表面に自然に繁茂したコケ類による土壌被覆が効果をもたらしたためと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画策定時において,平成28年度は(1)営農水田における現地観測,(2)水流による水田土壌の再懸濁,(3)雨滴による土壌の再懸濁に取り組む予定を立てた。(1)については懸濁物質収支の観測は完了したものの,田面水の濁度の連続観測が測器の故障のため,十分に進んでいるとは言いがたい状況にある。(2)については実験水槽の試作を試みたものの,十分には流速を上げられず,実験水槽の諸元の見直しを行っている。(3)については平成27年度に前倒し,実施しており,PIVの活用を含めて順調に進んでいる。 なかでも,営農水田における現地観測では,水田内側の畦畔において雨滴による土壌侵食が視認されたため,田面内2カ所における連続観測により明らかにすることを期待したものの,十分な結果を得るには至っていない。灌漑期間の中期以降においては,畦畔における雨滴侵食が主たる懸濁物質の発生源となっていることも想定されるため,懸濁物質流出の緩和策を考える意味においても次年度の観測を完了できるように準備に万端を期したい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,最終年度に当たり,(1)水田内側の畦畔における雨滴侵食に関する測定,(2)湛水下の土壌の雨滴による再懸濁,(3)水流による水田土壌の再懸濁の検討,(4)水田からの懸濁物質流出軽減策の検討,を重点的に取り組む。(1)畦畔における雨滴浸食の測定では,畦畔近傍と,畦畔から離れた箇所に濁度計を設置し,連続観測を行うことで,観測データの蓄積を図る。(2)湛水下土壌の雨滴浸食では,室内実験により水深と再懸濁量の関係を明らかにするとともに,PIVを用いてその様子についても詳細に検討する。(3)水流による再懸濁については,実験水槽を完成させ,どの程度の流速の時に土壌が再懸濁するかを明らかにするとともに,負荷流出量予測に用いられるL-Q式の物理的妥当性について検討を加えたい。(4)軽減策の検討では,水田における落水工に着目し,落水工の形態の変更によりどの程度懸濁物質流出量を軽減できるかを明らかにする。 (1),(2),(3)を通して,水田土壌の再懸濁メカニズムの定量的把握に努め,(4)により懸濁物質流出量の軽減策を提示できるよう,研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
水流による水田土壌の再懸濁を検討するための実験水槽を試作したものの,実験条件を満たす性能を得られていない。これにより,実験水槽を完成させることができなかったため,次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
水流による水田土壌の再懸濁を検討するための実験水槽を作成するために,次年度使用額および今年度配分額を充てる。
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Research Products
(3 results)