2016 Fiscal Year Research-status Report
北海道では冷夏でも日射量が多い特徴を活かせば水稲冷害を回避し高収量を得られるか?
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15K07660
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鮫島 良次 北海道大学, 農学研究院, 教授 (70355452)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水稲 / 冷害 / 不稔 / 深水管理 / 水温 / モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
比布町の水田において微気象観測を行い、既に実施した岩見沢、羊ケ丘における観測データと合わせて水温のモデルによる推定値を検証した。モデル(Maruyama, 2010)は西日本を対象として構築されているため北海道品種について圃場調査を行い、発育、葉面積推定サブモデルのパラメーターを変更した。その結果、岩見沢(2014年、2015年)、札幌(2015年)、比布(2016年)の各地点での日平均水温推定値の実測値とのRMSEが0.87, 1.08, 0.83, 0.94℃となった。推定値には設定水深はほとんど影響せず、また、地表面上2.5cm, 5cmでの水温観測からも、測定高度は日平均水温に影響しなかった。以上の検証を踏まえ、北海道内の水稲生産地帯の10地点(北斗、蘭越、むかわ、長沼、美唄、深川、上富良野、士別、名寄、羽幌)の1991年~2015年の水温を推定した。冷害年(1992, 1993, 2002, 2003, 2009年)の7月の水温は気温より平均2.1℃高かった。この温度差は気温が低く日射が多い年ほど大で、1993年は2.7℃の水気温差があった。昨年度構築した乾物生産および不稔量モデルを統合し、道内4地点の1993年~2014年の収量を推定したところ、冷害年を含む年次変動を再現することができた。前歴期間の温度も考慮できる不稔率推定モデル(田中、2007)を使用し、入力温度として気温および水温を与えることで、冷害年に深水管理を実施するとどれだけ不稔率を低下できるかを試算した。気温、水温で評価した1993年の不稔率は道内10地点平均で81、41%であった(各地域の普及所で調査した不稔率は平均64%であった)。深水管理による不稔率の低減は、冷害被害の大きな年に顕著で、1993年が40%、2003年が32%、1992年は13%の低減であったと評価できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水温推定、収量推定、不稔率推定のそれぞれについて、下記のように順調に進捗した。 ・水温推定モデルについては、北海道への適用、検証作業を終えた。RMSEは平均0.9℃であった。このモデルは今後の解析(深水管理の効果評価)に使用できる。 ・昨年度構築した収量モデルの検証を行なった。道内数地点における収量の年次変動を再現することが可能であった。 ・不稔率モデルについては、前歴期間の温度影響も考慮した既往のモデルを使用し、モデルに気温あるいは水温の入力による深水管理の効果の評価を試みた。このモデルを応用可能であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度構築した不稔量モデル(作況データから導出)と放射量変換型収量モデル、および本年度試用した不稔率モデルを統合、さらに作況データと照らして検討し、冷害年の水稲収量(深水管理の有無別に)を評価できるモデルを構築する。北海道の過去の冷害年において、深水管理を完全に実施した場合にどれだけの収量が穫れていたかを推定する。
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Causes of Carryover |
日射センサ2個使用し、群落の上下2か所を移動しながら日射透過率を計測できる装置を作成して、水稲群落の日射透過率の調査を行う予定であったが、装置の製作と調査を実施できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
日射透過率の計測装置を作成し、調査を行う。
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