2016 Fiscal Year Research-status Report
唾液中のバイオマーカーを指標としたストレスー体内時計ー疾病の相互関係の解明
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15K07740
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横田 伸一 東京大学, 医科学研究所, 助教 (10743239)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サーカディアンリズム / バイオマーカー / ストレス / 動物種差 / 霊長類 |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレスはバイオロジカルリズムを破綻させ、免疫力や運動能力に影響を及ぼし、疾患リスクを増大させる。しかし、ストレスの客観的に評価する方法は確立されておらず、ストレス体内時計、健康、疾患との関係は科学的に解明されていない。本研究では、マウスのおいてストレス性リズム障害を再現し、その分子病態メカニズムを解析するとともに、簡便かつ低侵襲な唾液中のバイオマーカーの変動を詳細に解析する。また、そこから見出されたバイオマーカーを他の動物種に適応できるか否かの検討を行う。ストレスー体内時計ー疾患の相互関係を明らかとし、動物種の垣根を超えて使用できる新規なバイオマーカーの確立をめざす。 本年度は、新世界ザルのリスザル(Saimiri boliviensis;昼行性)およびヨザル(Aotus lemurinus;夜行性)において、in vivoでサーカディアンリズム(活動リズムと体温リズム)を継続的に記録し、4時間おき6ポイント(ZT1,5,9,13,17,21)で唾液中のコルチゾールおよびメラトニン濃度をそれぞれ測定した。コルチゾールについては、唾液中でも明確な日内変動を示し、昼行性のリスザルと夜行性のヨザルで、逆位相になることが確認された。またリスザルおよびヨザルにおける時計遺伝子(Per1,Per2,Per3)のクローニングに着手し、ヨザルの時計遺伝子の部分配列を決定した。ヨザルについては、この部分配列を利用し、数本のヒゲ(無麻酔下)から時計遺伝子の変動をモニターすることに成功した。次年度は、ヨザルやリスザルにおいて、時差ボケモデルでの評価や給餌性ストレスの評価を実施し、マウスにおける同評価結果との比較を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
異動に伴い、当初計画していた動物種(ウマ)もしくは実験動物(PER2::LUCマウス)を用いた検討には変更が余儀なくされた。しかしながら、マウス飼育室を新設し(平成27年度)、新たな動物種(リスザル、ヨザルなどの霊長類動物)での検討の可能性を探索し(平成28年度)、新たな動物種でのサーカディアンリズムの測定システムをほぼ完備した。現在は、興味深い知見を得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には出来なかったマウスでのストレス性リズム障害のモデル構築は、平成29年度に実施する。また、サルでのストレス性リズム障害のモデルでの検討も継続して行い、マウスで得らえれたデータと比較検討を実施する。
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Causes of Carryover |
本年度に実施した唾液中のバイオマーカー測定のうちBDNFについては、測定用のEIAキットがリスザル、ヨザルのいずれのBDNFにも交差しないことが判明したため、予備検討用の1キットのみしか使用せず、その結果、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
テーマ開始時点には予定していなかった京都大学霊長類研究所の二ホンザルとアカゲザルを用いたバイオマーカー探索を次年度は実施することになったので、未使用額はその解析のための経費に充てることにしたい。
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