2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K07757
|
Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
西田 利穂 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (00120957)
|
Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
|
Keywords | 炭酸脱水酵素アイソザイム / IgG / 犬猫の食事性アレルギー / CA抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
CA-1, CA-II, CA-III に対するネコIgGをELISA法で測定した。健康52頭と43頭の疾病のネコを用いた。IgGの値は吸光度で表した。CA-1, CA-II, CA-III に対するIgG抗体価のカットオフ値は0.53, 0.54, 0.33であった。カットオフ値を超えたネコは、CA-Iでは妊娠40日齢の1頭であった。CA-IIではいなかった。CA-IIIでは腎不全と高血糖の1頭、転移性肺腫瘍の1頭、多飲多尿の1頭。脱水症の1頭の計4頭であった。 抗CA-III IgG が運動機能に与える影響を調べた。抗CA-III IgG 投与群と、正常ウサギIgG投与群(偽処置群)、無処置群の3群に分け、各5mgの抗体をマウスに筋肉注射した後、Tugging Force Testで筋力を測定した。7日目の測定後、腓腹筋と大腿四頭筋を採材し計量した。 筋力の低下傾向は抗CA-III群では1日目に見られ、偽処置群では1日目から3日目にかけて見られた。無処置群と抗CA-III群では3日目以降と偽処置群の5日目以降では筋力の上昇傾向が見られたが、実験期間を通じて抗CA-III群と偽処置群の間に有意差は認なかった。体重は各群増加傾向が見られた。投与後7日目での筋肉の採材の結果、右後肢の大腿四頭筋を除いたほかの3か所の採材部位で抗CA-III群の筋肉が最も軽く、次いで偽処置群の筋肉が軽く、無処置群の筋肉が最も重いという結果が得られた。抗CA-III IgGは筋肉の発達に影響を及ぼした可能性がある。抗CA-III群・偽処置群において投与後筋力の低下傾向が認められた原因は、無処置群では筋力上昇傾向が認められたことから、筋肉内注射による疼痛が原因と考えられる。7日目で各群ともに筋力が上昇したのは、実験期間中に各群の平均体重が増加していることから、成長に伴った筋力の上昇であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネコの血漿を用いて、CAアイソザイム(CA-I,CA-II,CA-III)に対するIgG抗体を測定した結果、CA-IIIに対するIgG 抗体の上昇を初めて発見した。しかしながらネコの疾患の特異性と抗体価の上昇には関連性は明らかとならなかった。CA-IとCA-IIに対する抗体価が上昇したネコはいなかった。マウスへの抗CA-III IgG 投与実験から、筋肉の発育に影響を及ぼす可能性が示唆された。しかし、筋肉注射をしたことで、筋力への影響は確認できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで、イヌとネコの血液中にCA-I, CA-II, CA-IIIに対するIgG抗体価が上昇する症例を発見した。しかし、これらの抗体がどのような影響を及ぼしているかは明らかではない。そこで今回は、CA-I, CA-II, CA-IIIに対するIgG抗体がラットの腎機能へ及ぼす影響を検討する。ラットを代謝ケージで飼育し、抗体を投与した後に尿を定期的に採取する。腎疾患マーカとして、近位尿細管に特異的に発現するL型脂肪酸結合タンパク質を定量して,尿細管機能障害を伴う腎障害の評価をする。
|
Causes of Carryover |
ネコ血漿の採取頭数が予定通り集まらなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
検体処理数を増やすために、試薬消耗品と人件費が必要である。
|