2016 Fiscal Year Research-status Report
非天然アミノ酸導入による機能・強度・形態を制御したシルク材料の創製研究
Project/Area Number |
15K07800
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
寺本 英敏 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門 新産業開拓研究領域, 上級研究員 (60391562)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉田 靖 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (70370666)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオテクノロジー / 非天然アミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、4-アジドフェニルアラニン(AzPhe)等の非天然アミノ酸導入によってシルク由来材料の機能・強度・形態を制御できることを実証すると同時に、手法の限界を探り、実用化ターゲットを決定することを目的とする。本年度は、主に以下3点の成果を得た。 (1)二官能性クリック反応試薬をAzPhe導入シルクと反応させ、架橋構造の形成が生じるかどうかを解析した。その結果、二官能性試薬との直接反応ではほとんど架橋は形成せず、その理由としてシルク分子間での立体障害が考えられた。そこでまず、リンカーを介してシルク分子に反応基を導入することで反応基をシルク分子から遠ざけた後に二官能性試薬と反応させたところ、架橋形成が生じやすくなることが分かった。 (2)従来よりも緩い基質識別能を有するPheRS変異体を絹糸腺で発現する組換えカイコを作出したところ、シルクの合成阻害が観察された。解析の結果、Pheの替わりにTrpが誤って認識されることによってタンパク質合成への悪影響が生じたことが分かった。 (3)RGDモチーフおよびクリック反応用のDBCO基を分子内に有する特殊ペプチドを入手し、これをシルクフィルムに対してクリック反応させた。反応後のフィルムへの線維芽細胞の初期付着性を評価した結果、細胞付着性の明らかな増大は観察されなかった。その理由として、ペプチドとAzPhe導入シルクとの反応が十分でなかったか、あるいは、細胞が認識できる形でペプチドの提示がなされていなかった可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RGD含有ペプチドを結合させることによるシルクフィルム上への細胞付着性の向上効果が、期待したとおりには観察されなかった。そのため、当初平成28年度に実施予定であった、紫外線照射によってシルクフィルムに機能性分子をパターニングし細胞の凝集状態等を制御する試みに着手できない状態となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、以下の3点を中心に研究を進める。 (1)RGD含有ペプチドとAzPhe導入シルクとの最適な反応条件を明らかにするとともに、RGD含有ペプチドを反応させたシルクフィルムへの細胞付着性を評価する。 (2)PEG化試薬とAzPhe導入シルクとの最適な反応条件を明らかにするとともに、PEG化試薬を反応させたシルクフィルムへの細胞付着性を評価する。 (3)AzPhe導入シルクフィルムに部分的に紫外線を照射してアジド基の反応性を失わせた後にRGD含有ペプチドあるいはPEG化試薬を反応させることにより、シルクフィルム上での細胞分布の制御を試みる。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」に記載したとおり、RGDモチーフの結合による細胞付着性の向上効果が確認できず、本年度計画していた紫外線照射による細胞分布の制御に関する実験が実施できなかった。その結果、計画よりも執行額が低くなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
RGDモチーフの結合による細胞付着性の向上効果を確認するための実験を集中的に行うために、異なる設計のペプチドや関連する試薬の購入等にあてる。
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