2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K07819
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
堀田 光生 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター 物質循環研究領域, ユニット長 (10355729)
|
Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
|
Keywords | 土壌還元消毒 / 嫌気性細菌 / 酢酸 / 二価鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
精製エタノール、エタノール発酵液、フスマなど、各種有機物を用いて還元消毒処理をした土壌を経時的に採取し、土壌微生物相(微生物の種類など)の変化を、PCR-DGGE法を用いて調査した結果、有機物の種類が違っても、共通かつ複数の微生物種が特異的に増殖してくることが確認された。そこで、これらDNAバンドをクローニングしてシーケンス解析を行い、種の同定を行った結果、共通のグループ(クロストリジウム目)に属する偏性嫌気性(酸素の無い状態でのみ生育可能)の細菌種であることがわかった。 そこで、これら細菌種の動態を定量PCR法や選択培地等を用いて調査するとともに、抗菌性物質(酢酸、二価鉄等)の生成と接種した病原菌(トマト萎凋病菌)の土壌中の生存との関連性を調査した。低濃度エタノール水(1%)をポット内に詰めた土壌に処理して密閉すると、土壌内でエタノールが速やかに分解・代謝されて土壌溶液中の酢酸濃度が上昇するとともに、遊離した二価鉄が検出された。定量PCR法による解析では、偏性嫌気性細菌Clostridium属菌数が、蒸留水を処理した場合に比べ有意に増加していることが確認された。その後、土壌溶液中の二価鉄濃度は低下し、Clostridium属菌数も減少したが、土壌全体に含まれる二価鉄量は急速に増加し、一定量以上蓄積した土壌中から病原菌が全く検出されなくなった。以上の結果から、二価鉄の生成・遊離および土壌中での蓄積過程が還元消毒効果と密接に関与していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2016年度は、還元消毒効果に関与し、土壌病原菌の死滅を引き起こすと考えられる物質を特定するとともに、還元消毒過程に関与すると考えられる土壌微生物種を分離、培養し、これらのエタノール等有機物の代謝能など、各種生理・生化学的性質を調べることを目標としてきた。しかし、これら土壌微生物種の分離、培養、保存方法の確立に時間がかかり、試験の一部を次年度以降に延期したため。
|
Strategy for Future Research Activity |
2017年度は、還元消毒過程に関与すると考えられる土壌微生物種の各種有機物の代謝能など、生理・生化学的性質を調査し、還元消毒関連物質の生成過程への関与の可能性を調べる。また、これら微生物種をエタノール等の有機物と一緒に人工汚染土壌に接種して還元消毒試験を行い、消毒効果(病原菌の死滅)が得られるか試験を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
開始年度(2015年度)は交付時期が遅れたため、物品の調達や補助員の採用が間に合わず、予定していた実験の大半を2016年度に延期した。2016年度は組織再編にともなう支出開始の遅れ、補助員の採用の遅れ、および土壌微生物の分離実験に予想より時間を要したことから、試験計画の遅れを完全に取り戻せず、試験の一部を2017年度に延期することにしたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度(2017年度)は、2016年度に予定していた実験を速やかに進めて試験計画の遅れを取り戻すとともに、2017年度に予定している試験の方もできるだけ早く遂行することにしており、そのため、繰り越し分と合わせた予算を使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)