2016 Fiscal Year Research-status Report
新規標的タンパク質の構造解析に基づく新たな抗結核薬の創製
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15K07909
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
山下 沢 武庫川女子大学, 薬学部, 准教授 (70398246)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇野 公之 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (00183020)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 抗結核薬 / 結晶構造解析 / 創薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
Agelasine Dの標的分子であるBCG3185cの構造解析を基に、新規抗結核薬の創製を目的に研究を遂行している。一昨年度からBCG3185cのX線結晶構造解析による立体構造の解明、それに基づくagelasine Dの結合様式の解明を目指して研究を行っている。一昨年度、タンパク質の結晶化に成功し、SPring-8においてBCG3185cタンパク質の結晶に対するX線照射による回折像の獲得に成功していた。昨年度は、得られた回折像を解析することによって、BCG3185cの立体構造を明らかにすることに成功した。 一方、BCG3185cには酵素として機能するための活性中心として金属を含有している可能性が示唆されていたが、アフィニティーカラムを用いた精製過程の関係上、活性中心の金属がニッケルに置き換わっていたことが明らかとなった。そこで、昨年度はニッケルを用いたアフィニティーカラムによる精製に替わる精製方法を検討した。その結果、ストレプトアビジンを用いたペプチド間の特異的相互作用を利用した精製法へと変更することで、活性中心金属の置換を回避できる新たな精製方法の確立に成功した。 改良した精製方法に基づいて獲得したBCG3185cに対し、新たに種々の結晶化条件を検討することで、同タンパク質の結晶化にも成功した。さらに、兵庫県にある大型放射光施設SPring-8においてX線を照射した結果、2.1オングストロームの分解能で回折データを得ることにも成功した。一方で、agelasine Dとの複合体について結晶化を試みたものの、良質な結晶を得ることは出来なかった。そこで、複合体の構造情報については、BCG3185cの立体構造情報を基に、シュレーディンガー社のドッキングシュミレーションソフトウェアであるGlideを用い、計算によって複合体の構造を予測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」でも記載している通り、申請時の研究計画に基づいて、BCG3185cの立体構造の同定およびagelasine Dとの複合体の構造予測を遂行してきた。これまで当初の計画と大きく異なる点として、従来のニッケルを用いたタンパク質精製方法では予見していなかった活性中心金属の置換が行われていたため、新たな精製方法を検討する必要が出てきた点がある。いくつかの精製方法を検討した結果、ペプチドによる特的相互作用を利用した精製方法を用いることで、本問題を解決することができた。一方で、BCG3185cとagelasine Dとの複合体の結晶化は非常に困難であり、様々な条件を検討してきたものの、その実現は非常に厳しいと考えている。しかしながら、「今後の研究推進方策」でも述べる通り、この複合体の結晶化の困難さは研究計画時にすでに予見しており、今年度、計画書の『研究が当初の計画通りに進まない時の対応』に記載内容に従って対応する。詳細は「今後の研究推進方策」にて述べる。以上の点も含め、本研究課題については現在までの進捗状況として、概ね順調に計画書通りに進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で記載したように、これまでに活性中心の金属が置換されていないBCG3185cの立体構造を明らかとし、またコンピュータによるドッキングシミュレーションを行うことで、agelasine Dが結合した構造についても予測することに成功した。現時点までの研究遂行において、BCG3185cとagelasine Dとの複合体の結晶化が極めて困難である点が障害となったが、本結果は想定の範囲内であるため、今後の研究推進方策としては、研究計画書の『研究が当初の計画通りに進まない時の対応』に記載していた通り、ドッキングシミュレーションで得られた予想構造の整合性を確認していくことで、結合様式の解明を目指す。まずは、シミュレーションによって得られた構造を基に、agelasine Dとの結合性に影響を及ぼすと考えられるアミノ酸を選定する。その後、候補となるアミノ酸を三つほどに絞り込み、各アミノ酸へ変異を導入し、それぞれの変異体を大腸菌での発現・精製を経て獲得する。獲得した各種変異体に対して、野生型と同様にBiacore T200を用いて結合性を評価することで、どのアミノ酸が強く影響するかを知ることができ、結果としてagelasine Dの結合部位を同定できると考えている。なお、Biacore以外にも、研究協力者である竹下先生の大阪大学蛋白質研究所において等温滴定型カロリメトリー(ITC)を測定する装置を用いることで、Biacoreと同じように速度論的なパラメータを得ることも可能であるため、多面的に測定を行うことも検討している。得られた測定データを基に、agelasine Dよりも抗結核作用を示す創薬へと繋げ、最終的に、得られた結果を学術雑誌にて印刷公表することで、社会へ還元することを目標とする。
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