2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K08040
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
服部 隆行 国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子医薬部, 主任研究官 (50377751)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 志賀毒素 / アポトーシス / アポトーシス阻害タンパク質 / プロテアソーム阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管出血性大腸菌感染症は、本邦においても毎年一定の患者を出しており、今日に至っても減少の傾向を示していない。腸管出血性大腸菌の感染は下痢や出血性大腸炎を誘発するのみならず、感染者の3-10%において溶血性尿毒素症症候群や脳症といった致死性の合併症を引き起こす。これらの症状を誘発する主要病原因子の一つは、腸管出血性大腸菌の産生する志賀毒素であると考えられているが、未だ有効な治療薬がなく、志賀毒素の毒性を中和できる治療薬の開発が急務である。我々は様々な培養細胞株に志賀毒素を作用させることによって、志賀毒素はヒト急性単球性白血病細胞株THP1に速やかに、かつ効率的にアポトーシスを誘導することを見出した。そこで、THP1細胞をモデル細胞株として、志賀毒素によるアポトーシス誘導機構を詳細に調べたところ、主に以下の知見を得た(FEBS Open Bio, 5, 605, 2015)。 1. 志賀毒素によるアポトーシスの誘導には、細胞表面上のGb3発現が必須である。2. 志賀毒素によってcaspase 9がinitiator caspaseとして活性化し、apoptosomeが形成される。3. 志賀毒素によってプロテアソーム活性依存的に、抗アポトーシスタンパク質の分解が誘導される。4. 志賀毒素によるcaspaseの活性化にはプロテアソーム活性が要求される。5. プロテアソームを阻害すると、志賀毒素によるin vitroにおける細胞死、およびin vivoにおけるマウスに対する志賀毒素の致死活性が抑制される。 これらの知見は、プロテアソーム阻害薬が腸管出血性大腸菌感染時における、致死性の合併症に対する治療薬として利用できる可能性を示唆するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、志賀毒素によるアポトーシス誘導機構の解明できた。またその知見を基に、志賀毒素による細胞死や、マウスに対する致死活性にプロテアソーム阻害薬が有効であることを見出し、論文発表できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度においては、志賀毒素による細胞死に対する新規小胞輸送阻害薬の効果についての解析を行う予定である。 また、平成29年度においては、志賀毒素耐性THP1細胞亜株を用いて、志賀毒素耐性獲得機構の解析、および志賀毒素感受性因子の探索を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究の進行具合から勘案し、平成27年度より平成28年度に消耗品等の支出が多くなる見込みとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に消耗品、旅費に充てる予定。
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