2015 Fiscal Year Research-status Report
microRNA過剰発現ラットの作製とそれを用いた新しい不整脈発症機序の解明
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15K08179
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
森島 真幸 大分大学, 医学部, 助教 (40437934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 克重 大分大学, 医学部, 教授 (40253778) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 心房細動 / microRNA / イオンチャネル / 疾患モデルラット |
Outline of Annual Research Achievements |
持続性心房細動患者260例(文書による同意を得ている)の中から、60~70歳代の男性をピックアップし、さらに重度の心不全、糖尿病、ステロイド治療、透析、心筋炎、発作性心房細動の既往歴を持つ患者は除外して洞調律群(対照群)11例、慢性Af群9例を選出した。採集した右心耳からtotal RNAを抽出しmicroRNA発現プロファイルをマイクロアレイを用いて網羅的に解析したところ、慢性Af群(n=9)のすべての心房筋では、洞調律群(n=11)に比べ有意にmiR-30d発現が増加していた。さらに、検体数を増やして慢性Af群(n=14)の心房筋におけるmiR-30dの発現量をリアルタイムPCR法により確認したところ、洞調律群(n=19)に比べ176%増加しておりマイクロアレイと同様の結果が得られた。心筋に存在するイオンチャネルのうち、miR-30dがターゲットとするのは心房筋に豊富に存在するK+チャネル(Kir3.1/KCNJ3)とCa2+チャネル(Cav1.2/CACNA1C)である。このため、これらターゲット遺伝子についてmRNA、及びそのタンパク発現量を定量したところ、慢性Af群の心房筋ではK+チャネル、及びCa2+チャネルのmRNAとタンパク発現が有意に減少していた。次に、miR-30dの細胞での機能を解析するために、初代培養ラット心筋細胞にmiR-30dを過剰発現させたところ、導入したオリゴ(Pre-miRNA oligonucleotide)の濃度依存的にK+チャネルmRNA発現量は抑制された。一方、Anti-miR miRNA inhibitorを用いてノックダウンするとK+チャネルmRNA発現量は濃度依存的に増加した。さらに我々は、miR-30dは心臓特異的に発現するmicroRNAであること、また細胞内Ca2+濃度に依存して発現が上昇することを新たに見出した。我々が発見したmiR-30dとAfに関する研究報告はこれまでに無いため、本事業の結果からmiR-30dは心筋の電気的にリモデリング成因において重要な因子であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の事業により、miR-30dはAfの発症や維持に関与している可能性が示唆され、miR-30dの発現異常の解析は心筋の電気的リモデリングによるAf発症メカニズムの解明には欠かせないと考えられる。miR-30dの心筋細胞内における機能の解析は順調に進んでいるため、今後はmiR-30d過剰発現ラットを作製して生理的解析をする必要がある。我々はすでに同ラットを作製中であり、founderラットが誕生している。誕生したF0ラットのgenotypingの結果からmiR-30d陽性個体を数匹獲得している。
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Strategy for Future Research Activity |
miR-30dの機能を個体レベルで解析するために、引き続きmiR-30d過剰発現ラットの作製を進める。それと並行して、慢性Afで異常発現するmiR-30dが心筋細胞の電気活動にどのような影響を及ぼすかを明らかにするために、miR-30dを過剰発現あるいはノックダウンした心筋細胞の電気的性質の変化をパッチクランプ法により解析する。さらに、遺伝子改変ラットの作製と並行してmiR-30dの生体内での作用を明らかにするためにアンジオテンシンII(Ang II)の持続投与による細胞内Ca2+過負荷病態モデルラットを作成し、病態心におけるmiR-30dの発現増加メカニズム及び、病態下における血漿30d発現量の定量を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度に購入した消耗品の購入金額が当初の予定より1円安価であっため、次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度の繰り越し金を加えた本年度の研究資金は、研究計画書に記載した平成28年度事業計画のとおりに適正に使用する。
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Research Products
(6 results)