2015 Fiscal Year Research-status Report
加齢により暑熱馴化形成機能が減弱するメカニズムの解明と熱中症予防への応用
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15K08209
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
松崎 健太郎 島根大学, 医学部, 助教 (90457185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
紫藤 治 島根大学, 医学部, 教授 (40175386)
片倉 賢紀 城西大学, 薬学部, 准教授 (40383179)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 暑熱馴化 / 視床下部 / 神経新生 / 加齢 / 認知症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高齢者や認知症患者における熱中症予防とその中枢機構の解明を目指し、(1)老化したラットおよび(2)AD発症の原因物質であるアミロイドβ(Aβ)を脳室に投与して作製したアルツハイマー病(AD)モデルラットにおける暑熱馴化の形成と自立性・行動性体温調節変化ならびに視床下部神経新生の関連について検討した。
(1)これまでに、老齢ラット(22~24ヶ月齢)では暑熱馴化形成時にみられる耐暑熱性の亢進が若齢ラットに比較して有意に減弱することを見出している。そこで、老齢ラットの脳を摘出し免疫組織学解析を行ったところ、暑熱馴化形成時の視床下部における神経新生が阻害されることを見出した。これらの結果より、老化による視床下部神経新生機能の劣化が暑熱馴化の形成を阻害する可能性を考えた。
(2)ADモデル動物の作製はHashimotoら(2002)の方法に従った。ADモデルラットでは暑熱馴化形成時の耐暑熱性が低下することを見出している。また、視床下部を摘出し免疫組織学解析ならびにWestern解析を行ったところ、神経新生のマーカーであるDoublecortin(Dcx)ならびにPloliferating cell nuclear antigen (PCNA)などの発現量が減少することを明らかにした。さらに、ADモデル動物では行動生体温調節の指標とされる選択環境温度が変化することを明らかにした。これらの結果より、ADモデル動物では行動生体温調節機能や暑熱馴化形成機能が減弱することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
老齢ラットならびにADモデルラットの暑熱馴化形成機能の低下とそのメカニズムを免疫組織学的・生化学的に解析した。また、それらのラットにおける行動性ならびに自立性体温調節機能の劣化について検討することが出来た。さらに老齢ラットやADモデルラットの視床下部神経新生を解析し、暑熱馴化形成機能と視床下部神経新生ならびに老化との因果関係を考察することができ、これらの結果を学術誌や学会等で発表することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
老齢ラットやADモデルラットの脳室に神経栄養因子や成長因子を投与して神経新生を誘導し、暑熱馴化による耐暑熱性が亢進するか否かを検討する。また、運動トレーニングによる暑熱馴化の形成と視床下部神経新生、ならびにそれに対する老化や認知機能低下の影響について解析すると同時に、暑熱暴露による暑熱馴化形成との差異を比較検討する。
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Causes of Carryover |
ラット飼育用チャンバーの冷却装置が故障したため、当初計画していたテレメトリー装置の購入を延期し、チャンバー修理・購入費とするため差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、飼育チャンバーの見積りを各メーカーから取り寄せ中であり、決定次第購入する。
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