2015 Fiscal Year Research-status Report
新規化合物による高効率な多能性幹細胞-心筋分化誘導法の開発
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15K08270
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南 一成 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 助教 (40362537)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多能性幹細胞 / 心筋細胞 / 低分子化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は多能性幹細胞から心筋細胞への分化誘導を促進する低分子化合物KY02111をハイスループットスクリーニングにより発見した。このKY02111をさらに合成展開し、より心筋への誘導効率が高くより低濃度で有効な新規化合物をスクリーニングしたところ、KY02111の炭素鎖の長さとハロゲン基をClからIに変更したKY03-Iを見出すことができた。これはKY02111よりも10分の1の低濃度で効率的に心筋細胞を誘導することができ、また血清タンパクが含まれていない培地においても析出することなく高濃度で溶解する性質を持っていた。このKY03-Iを用いて、血清タンパクを用いないプロテインフリー培地による多能性幹細胞-心筋分化誘導法を新たに開発し、特許出願を行った。これにより培地の低コスト化が可能になった上に、血清タンパクや動物成分を用いないため臨床グレードの心筋細胞を生産可能になったため、今後の実用化が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多能性幹細胞を用いたスクリーニング系により、新規KY03-Iを含む心筋分化に有効な低分子化合物を複数発見することができた。それらの化合物を組み合わせることにより、世界初の完全プロテイン/ペプチドフリー分化誘導法を開発することに成功した。これにより心筋誘導に用いる培地のコストを最大100分の1まで下げることが可能になり、iPS-心筋細胞を広く利用することが可能になった。また血清アルブミンやマトリゲルなどの動物由来成分はウイルスやマイコプラズマのコンタミリスクがあるため、臨床用の移植細胞としては使用しないのが望ましく、その意味でもプロテインフリーの誘導法は有用である。またこの心筋分化誘導法は浮遊培養系で可能なため、バイオリアクターによる3次元大量培養が可能であり、将来的に臨床用ヒト心筋細胞の大量生産を実現する技術となる。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床用、ドラッグスクリーニング用のヒトiPS-心筋細胞の大量生産技術として、バイオリアクターへ適用するために、ゲル化培地等を用いた完全3次元培養系を開発する。そのためのKY03-Iを含めた各低分子化合物の添加濃度、添加時期等を検討し、必要に応じて新たな化合物やアミノ酸等を添加し培地成分を検討する。またより実際の心臓に近い構造を得られるように、3次元の心筋組織培養法を開発する。
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Causes of Carryover |
当該年度よりも次年度の消耗品支出予定が大きくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞培養液、プラスチック製品、試薬類、旅費に使用する。
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