2016 Fiscal Year Research-status Report
急速に進行する膵管がんの特性を規定する分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K08413
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
池原 譲 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 創薬基盤研究部門, 上級主任研究員 (10311440)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 癌 / 遺伝子改変マウス / 膵臓 / 上皮間葉変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、急速に進行する難治性膵管がんの進展とその発がんメカニズムを解明することである。そこで、これまでに作成した「急速に進行する膵管がんを発症する遺伝子改変マウス」の解析を出発点に、以下の2つの課題に取り組んでいる。1)上皮間葉系変換(EMT)の制御機構の解明と、2)急速に進行する難治性膵管がんがPancreatic intraepithelial neoplasia (PanIN)より直接発生するかの解明である。 本年度1)では、作成した膵管がん細胞株および比較対象となる不死化膵管上皮細胞における管状構造形成とEMTの関連性、並びにその制御メカニズムを明らかにした。2) では、KrasG12D に加えてDox投与依存性にtsTAgを発現するようにした遺伝子改変マウスを対象に、病理学的な解析を進めた。同マウスは、Doxの飲水投与によって膵管がんを発症して2週間以内に死亡することから、膵管がんの発症と生存期間はDox飲水投与を開始したマウスの週齢に拠らないことを明らかにすることが出来た。一方、KrasG12Dのみを単独発現するマウスの膵臓は、PanINが確認できるものの、明らかな発がんは認められなかった。KrasG12D を持たない、Dox投与によるtsTAgを膵臓に単独発現するマウスも同様であり、投与開始後に膵炎を生じるものの8週間以内に死亡するものはなかった。現在、生じたがんがPanINとの連続性を有するかどうかなど、病理組織学的な解析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では、1)上皮間葉系変換(EMT)の制御機構の解明と、2)急速に進行する難治性膵管がんがPancreatic intraepithelial neoplasia (PanIN)より直接発生するかについてその解明を進めている。 1)に関して、3次元培養におけるMorphogenesisから、Tube forming cloneとSphere forming cloneを単離することができた。Sphere forming cloneはTGFβ処理によってTube forming cloneへ形質転換するのに対し、Tube forming cloneはTGFβ阻害剤処理にSphere forming cloneへと変化することを明らかにした。さらにTGFβシグナルが標的とする86遺伝子の発現について、形成されたSphereとTubeを対象に検討したところ、Tubeでの発現が2倍以上高い、6遺伝子を見出した。これらの遺伝子はTGFβ処理・TGFβ阻害剤処理に連動した発現の変動があり、膵管がんにおける管状構造形成を特徴づけるものと考えられた。また、透過電顕による解析結果では、6遺伝子の発現上昇と連動する管状構造形成はEMTであり、6遺伝子の発現低下と連動するMETを示すことを明らかにした。 2)に関してKrasG12D に加えて、Dox投与依存性にtsTAgを発現するように作成した遺伝子改変マウスを対象とする病理学的な解析を行った。同マウスは、Doxの飲水投与によって膵管がんを発症して2週間以内に死亡することから、膵管がんの発症と生存期間はDox飲水投与を開始したマウスの週齢に拠らないことを明らかにした。Doxの飲水投与開始3日目以降に採取したサンプルの詳細な病理組織学的解析を行うことで、生じたがんがPanINとの連続性があるかどうかの解析を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度1)では、6遺伝子の発現に着目し、KrasG12D に加えて、Dox投与依存性にtsTAgを発現するように作成した遺伝子改変マウスを対象とする解析を行うとともに、Tissue Micro arrayなどを用いて6遺伝子の発現評価を行う。これら6遺伝子が、膵管がんにおける管状構造形成を特徴づけるかどうかの解析を行う。具体的には、マウス発がんモデルを用いて再現性の確認を行うとともに、さらにはその検出評価が臨床的な有用性を有するかどうかを明らかにする。 2)では28年度に引き続き、膵管がんが生じたPanINから直接発生するかどうかの実験病理学的な解析を進める。Tet-On依存的なT抗原発現は、Dox投与開始後3日以降に認められるため、投与開始後3日目以降から1日経過するごとに膵臓を複数の個体から回収し、連続切片を作製して病理組織学的解析を行う。同解析では、PanIN病変の中に膵臓がんの初期病変が認められるかどうかを重点的に解析する。
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Causes of Carryover |
遺伝子発現解析実験を8件体分で計画していたところ、年度中にサンプルを準備出来たものが4件体分となったため、残りのサンプル発現解析実験と、試薬・消耗品の購入を次年度へ回すこととなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験計画に従い、残りのサンプルについての発現解析実験と、必要となる解析試薬・消耗品の購入を今年度分に追加して、物品購入手続きを行う。
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[Journal Article] Evaluation of fluorescence imaging with indocyanine green in hepatocellular carcinoma2016
Author(s)
M. Kaibori, K. Matsui, M. Ishizaki, H. Iida, T. Sakaguchi, T. Tsuda, T. Okumura, K. Inoue, S. Shimada, S. Ohtsubo, M. Kusano, Y. Ikehara, E. Ozeki, T. Kitawaki and M. Kon
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Journal Title
Cancer Imaging
Volume: 16(6)
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Myosin light chain 9 and 12 are functional ligands for CD69 that regulate airway inflammation2016
Author(s)
K. Hayashizaki, M Y. Kimura, K. Tokoyoda, H. Hosokawa, K. Shinoda, K. Hirahara, T. Ichikawa, A. Onodera, A. Hanazawa, C. Iwamura, J.Kakuta, K. Muramoto, S. Motohashi, D J. Tumes, T. Iinuma, H. Yamamoto, Y. Ikehara, Y. Okamoto, and T. Nakayama
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Journal Title
Sci. Immunol
Volume: 1(3)
Pages: 9154
Peer Reviewed
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