2016 Fiscal Year Research-status Report
CRISPRの解析を通したV. cholerae病原株出現と拡散機構の解明
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15K08465
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
竹村 太地郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (60572899)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 環境コレラ菌 / ゲノム解析 / CRISPR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Vibrio choleraeを解析対象として、環境中の水平遺伝子伝達による多様性獲得と形質変化、並びに菌数制御機構へのCRISPR/Casの寄与を明らかにすることを目的とする。これまでにゲノムデータベースより約300株のV. choleraeゲノム情報を取得し、CRISPR/Cas領域の配列解析を行い、これまでに見出していたタイプI-E、I-Fの他にタイプIII-Bに類似するCRISPRを見出した。III-B特異的PCRにより、NAG株の6株がこのタイプを保有することを確認したが、病原株(O1株、O139株共)には見出せていない。本年度は研究協力者の所属する国立感染症研究所細菌第1部との共同研究を通じてO抗原型の異なるNAG株約200株の全ゲノム配列を入手し、CRISPRのスペーサー領域の抽出を行なった。CRISPR/Cas領域のタイプ別に配列相同性によるタイリングを行うとともに、現在各スペーサーの標的の解明を進めている。また、昨年度に引き続いてベトナム北部地域において環境水検体の収集と環境コレラ菌の検出・分離を行なった。主要病原遺伝子であるCTX遺伝子を有する株は得られなかったが、O1抗原型が2株、O139抗原型が2株分離された。同時に分離したNAG株とともに全ゲノム配列の取得を進め、CRISPR保有株におけるタイピングとその標的の解析を進めている。また全ゲノム配列データからコアゲノムの決定と水平伝達遺伝子領域の抽出、その領域の系統解析を行っており、CRISPR/Casとの相関を明らかにしていく。別研究による他地域環境分離株との比較ゲノム解析に進み、ゲノム動態の地域特性と経時変化を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度に引き続き、(1)実験室保存株を用いたO抗原型別のCRISPR/Casの解析と(2)ベトナム環境水由来コレラ菌の分離と全ゲノム配列取得、系統解析の2項目について解析を進めた。 (1)についてはこれまでにタイプI-E、I-F、III-BのCRISPRの保有率を明らかにしてきた。O抗原型別に収集した約200株のNAG株配列を元に、本年度はスペーサー領域の解析を進め、CRISPRタイプ別にタイリングを行なった。分離地域、分離年等との相関は見出せず、現在それらのNAG株の系統関係との相関を解析中である。 (2)については2ヶ月おきにベトナム北部ナムディン省、タイビン省にて環境水検体の収集とPCRを用いた病原・非病原コレラ菌のスクリーニング、洗濯培養による分離を行なった。主要病原因子であるctx遺伝子は全ての検体で見出すことができなかったが、O1抗原を有する株が2株、O139抗原を有する株が2株分離された。現在同時に分離されたNAG株とともに順次全ゲノム配列の取得を進めており、Integrated Conjugative Element (ICE)を含む水平伝達遺伝子領域の抽出とその領域の系統解析を進めている。今後CRISPR領域の抽出とスペーサー配列の相同性解析、標的配列の解析を進め、形質転換とその制御機構の解明、それらにおけるCRISPR/Cas機構の寄与の解析を進める。また、他地域における環境コレラ菌分離株との比較ゲノム解析を進め、系統関係を明らかにするとともに特定のグループの選択・拡散メカニズムを解明する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はない。(1)実験室保存株を用いた抗原型別のCRISPR/Cas保有率と標的外来遺伝因子の解明に関しては、スペーサー配列のパネル化が終了したため、標的配列の情報を含んだデータベース化を行う。同時に分離株の系統関係とスペーサー配列のグループ分け、さらに水平伝達遺伝子群との相関解析を行い、本研究の目的の一つである水平遺伝子伝達による多様性獲得とその制御機構を描き出す。(2)ベトナム環境水由来コレラ菌の分離とゲノム配列の取得に関しては、ベトナム国立衛生疫学研究所細菌部との共同で定期的な検体収集とモニタリングを継続する予定であり、手法等も変更はない。これまでに取得したNAG株、他地域病原株の配列情報より非病原株を含むV. choleraeコアゲノムの決定とファージ、ICE等の外来(浮動)遺伝子配列の同定を現在進めている。(3)比較ゲノムによるベトナム分離株の系統学的解析とCRISPR/Casと水平伝達遺伝子、溶菌/抵抗因子の解析に関しては、(2)と関連して進行中であり、他地域にて収集された株との系統解析を行なっている。現在までに、日本、台湾、インドネシア、ウガンダ、チリ、ブラジルの環境分離コレラ菌の配列取得は終了した。比較ゲノム解析を通じて、ゲノム動態の経時変化を明らかにする。水平伝達遺伝子とCRISPR領域の抽出は着手しており、平成29年度は溶菌・抵抗因子の同定とその系統樹上での分布を解析していく。
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Research Products
(1 results)