2016 Fiscal Year Research-status Report
膵・心筋親和性ウイルスの新規持続感染動物モデルの作出と重症・劇症化機序の解明
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15K08511
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
永田 典代 国立感染症研究所, 感染病理部, 室長 (30270648)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ピコルナウイルス / 膵親和性ウイルス / 筋親和性ウイルス / 持続感染 / 動物モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ピコルナウイルス感染症のうち、心筋炎や膵炎に着眼し、その劇症化と重症化に関わる宿主側、ウイルス側要因を明らかにする事を目的とする。 様々な臨床症状を呈したコクサッキーウイルスB群2型感染患者由来株のうち、新生仔マウスの上皮に感染性を示した株と新生仔マウスの上皮に感染性を示さなかった株を選出し、これを 成マウス(雌BALB/c) に経粘膜的に接種した結果、異なる病態と感染性を示し、異常行動(闘争に類似)を示すものがみられた。そこで今年度は、上皮感染株を経鼻接種した成マウスを経時的に病理学的解析したところ、ウイルスは鼻粘膜上皮、嗅上皮に感染伝播し、嗅球の大型神経細胞に感染し嗅球に強い炎症を引き起こしたことが判明した。興味深い事に、これらの個体の大脳皮質や脳幹実質で明らかな炎症所見は見られなかった。一方、患者由来株接種後マウスでは一定の割合で、膵に病変が認められた(5%程度)が、心筋親和性を示唆する所見は認められなかった。よって、本研究で使用している経粘膜感染モデルは現状において膵・心筋発症モデルとして不十分であると考えられた。一方、サフォードウイルス3型の上気道炎患者由来株は、免疫不全マウスにおいて経鼻感染後に、膵、心に強い親和性を示し、およそ2ヶ月経過してからウイルス感染による全身の骨格筋炎を発症した。病理組織学的には好中球と単球の浸潤が中心であった。今年度は、解析に必要な抗ウイルス抗体の作出を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コクサッキーウイルスに関しては患者分離株経粘膜感染後の親和性臓器と病原性をおおむね把握することができたが、経粘膜感染モデルは現状において膵・心筋発症モデルとして不十分と考えられた。一方で、免疫不全マウスにおけるサフォードウイルス3型上気道炎患者由来株のウイルスゲノムの変化と筋炎発症に関わる免疫に関する解析は次年度に持ち越した。
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Strategy for Future Research Activity |
コクサッキーウイルス臨床分離株に関しては、ウイルス血症モデルを利用し、成マウスにおける膵炎と心筋炎発症の有無を評価し、当初の研究目的へと軌道修正を図る。サフォードウイルスに関しては、抗ウイルス抗体を整備し、NOD/SCIDマウス持続感染モデルにおけるウイルス動態解析、ゲノムの変化と筋炎発症に関わる免疫担当細胞について解析を進める。
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Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが平成29年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成28年度分についてはほぼ使用済みである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のとおり。
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