2015 Fiscal Year Research-status Report
「人と薬をつなぐコミュニケーション・モデル」の構築とその教育プログラムの実践
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15K08568
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
菅沼 太陽 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00328379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 なおみ 慶應義塾大学, 看護学部, 教授 (70288124)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 薬学教育 / 在宅医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度では、在宅医療に関わる医療福祉従事者(医師、薬剤師、コメディカル、ケアマネージャー、介護士等)と薬剤師との間で連携がとれなかった事例を調べるための先行研究調査を実施した。医師、看護師、ケアマネージャー、介護士の4職種を中心に文献から薬剤師との協働とその連携阻害要因を調べた。薬剤師が考えている協働の役割は、「患者の薬剤に関する問題発見とマネージメント」、「患者への薬剤教育」をあげていた。しかし医師では、「保険承認や患者カウンセリング」を薬剤師に期待している。医師と薬剤師の協働を阻害する要因としては、「薬剤師側の患者情報の少なさ」、「薬剤師の能力不足」、「相手の見えないコミュニケーション」などがあげられた。医師と薬剤師の間で薬剤師の役割の認識が異なっている事が明らかとなった。看護師は、患者だけではなく「看護師への薬の説明」、「医師との連携」、を期待していた。一方で「薬剤師が医師に聞けないため看護師に聞いてくる」、「役割の不明確さ」、「薬剤師と会う機会の不足」が阻害要因としてあげられている。これらのことは医療職同士の役割が理解されていないことが重要な問題点として考えられる。福祉職は薬剤師と直接関係している先行研究はないが、医療職との問題点があった。福祉職の協働について医療職に期待することは、「薬の説明」、「患者状態の把握」を主に期待していた。一方で、「専門用語がわからない」、「与薬時の用法、効果、変更がわからない」など、知識・情報に関する阻害要因が明らかとなっている。これらの先行研究は、在宅医療の現場で薬剤師と他職種が協働する以前の研究結果であり、薬剤師の在宅医療の現場での連携に関して、現在ある問題点を明らかにするため、医療福祉職へのインタビューガイド、薬剤師への質問紙を作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の特色である「在宅医療の現場で医療福祉職全般の視点から作成する教育プログラム 」を実現するため、多くの医療福祉職に対してインタビュー調査をしなければならない。当初予定していた依頼先では実施困難であったため、新たな依頼先を検討中であった。現在、在宅医療を実施している医療機関に交渉中である。上述の理由により計画よりも若干の遅れが生じている。 先行研究の事例を調査した結果、インタビューは計画よりも多くの職種のインタビューが必要であると考え、当初計画には入っていなかった歯科医師、歯科衛生士、理学療法士をインタビューの被験者とした。現在インタビューガイドを作成中である。歯科医医師、歯科衛生士も在宅医療の現場で活躍しており、患者も骨粗鬆症の薬物を服用している場合には、歯科医師に報告する。このように、歯科領域と薬剤師との協働は非常に重要と考え、歯科医師、歯科衛生士を調査対象とした。さらに近年整形外科領域において、理学療法士が居宅でのリハビリテーションを実施するケースが増加している。理学療法士と薬剤師との協働に関する先行研究はなされていないため、多職種の視点から教育プログラムを作る本研究で、理学療法士と薬剤師との協働において、お互いに期待すること、阻害要因などを明らかにする。 さらに薬剤師への質問紙調査を実施し、薬剤師が在宅医療の現場で他の職種との連携について、困難だと感じていることを明らかにする。現在、薬剤師への質問紙調査のため、株式会社ファーマみらいへ協力を依頼している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、①医療福祉職80名を対象とする「薬剤師とうまくいかなかった事例」に関するインタビュー調査、②薬剤師100名への質問紙調査および③薬剤師20名を対象とする「在宅医療における円滑な多職種連携に必要なコミュニケーション能力プログラム」の試行(教育効果測定)を実施する。 ①インタビュー調査:医師・看護師・薬剤師・歯科医師・理学療法士・歯科衛生士・介護支援専門員・訪問介護員各10名程度に対して半構造化面接を行い、医療チームでの協働に際し生じた問題や薬剤師の役割への理解、薬剤師に期待することなどについて情報を収集する。 ②質問紙調査:薬剤師100名に対し、「在宅医療において他職種と連携することに対する意識」と題する質問紙調査を実施し、回答者自身の属性(教育課程)や他職種との連携事例などの情報を収集する。 ③教育効果測定:薬剤師20名に対し、「円滑な多職種連携に必要なコミュニケーション能力プログラム」を実施し、教育介入前後のスキルを客観的尺度を用いて測定する。教育測定はセミナー形式で実施しする。 インタビュー調査で、歯科医師、歯科衛生士および理学療法士を対象に追加したため、3職種への依頼先を検討中である。在宅医療に注力している歯科医療機関への依頼内容を作成する。また理学療法士への依頼は、在宅医療サービスを中心に活動している医療機関へ医師、看護師への依頼と同時に進めている。
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Causes of Carryover |
インタビュー調査の調査対象の募集に時間を費やし調査が遅れた。そのためインタビュー調査の謝金が次年度使用額として生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インタビュー調査の謝金として、一人あたり30分のインタビューに回答する謝礼として、一律3000円のQUOカードを検討中である。インタビューは80人を予定しており、240000円の支払いを予定している。質問紙調査は100人に対して実施予定であり、回答後に500円のQUOカードを進呈するため、50000円の支出を計画している。
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