2016 Fiscal Year Research-status Report
市民と共に学ぶ医療を実現する次世代模擬患者養成プログラム開発に関する研究
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15K08570
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
藤倉 輝道 日本医科大学, 医学部, 教授 (00238552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 千鹿子 日本医科大学, 医学部, 助教 (90453042)
早坂 明哲 日本医科大学, 医学部, 助教 (50516094)
樫村 正美 日本医科大学, 医学部, 講師 (00550550)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 模擬患者 / Lay person / フィードバック技法 / 地域基盤型教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
「患者としてよりもLay person、市民・公衆の視点を医学教育に取り入れることの現状と意義」について全国の医学部を対象にアンケート調査を行い60大学から回答を得た。一般市民による模擬患者(SP)としての教育の参画、医療現場以外の地域のコミュニティを通じた何らかの教育活動での市民参画が多くの大学で報告された。また一般市民が医学教育に参画する意義について大学側の見解を調査したところ、カリキュラム開発におけるニーズ把握、プログラム評価に必要と考える大学は57%、大学と地域とのつながりの強化に必要と考える大学が80%であった。 これらの調査結果と前年度までに行われたSPを対象とするインタビュー調査の結果も踏まえ、今年度「次世代模擬患者養成プログラム」のトライアルとして、「模擬患者育成の歴史的経緯」、「フィードバック技法とコーチングスキル」、「言葉に焦点をあてた現代日本文化の考察」、「地域住民を巻き込んだ健康増進活動」のテーマで30から40名の実働中のSPを対象に計4回のプログラム提供を行った。実施後のSPインタビューの結果からは、フィードバック技法については特にスキルアップが必要との意見が抽出された。地域基盤型教育への参画についてもSPの関心は高いことが推察されたが、現代医療の問題点そのものについて、医療コミュニケーション教育を越えた医学教育全般への理解については強い関心は認めなかった。一方で、客観的臨床能力試験(OSCE)対策となりがちな現行のSP参加医学教育について省察が行われ、「型」としてのコミュニケーション教育の意義について10年の教育参画経験を経た再評価がSPにより行われた。 以上をふまえ、「次世代模擬患者養成プログラム」の方向性としては、「フィードバック技能などの基本的SP技能向上」と特に「地域基盤型教育参画への発展性」の2点に重点を置き今年度も行うこととなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国調査アンケートを終え、およそ我が国における医学教育への一般市民参画の現状把握、並びに大学側の必要性認識についてはデータが得られた。さらにトライアルとしての「次世代模擬患者養成プログラム」を実際に現在実働しているSPを対象に開催し、プログラム評価の結果から、SP側の関心、今後の学習ニーズについてもおよその把握が出来た。SP側からみた技能としてのフィードバック能力開発のニーズに加え、SPが地域基盤型教育展開の上で、橋渡し的役割を果たしうる可能性が見出された。フォーカスグループインタビューの中でSP自身の口から、「自らの立ち位置が、ちょうど患者と医療者の橋渡し的な位置」にあることが語られ、自然発生的にこの自覚が生じたことは本研究の方向性に合致するものであり、今年度の成果の一つである。 大学側のニーズとして、SPに、OSCEなどの際には通常求められていない、教育者的役割を一部担うという観点があり、本研究でもそのための学習、実践経験の場の提供が計画されていたが、現状ではSP側のニーズと若干乖離していることがわかった。この点は予想されてはいたが、研究の進捗に影響を与えている。これは後述のテキスト作成の過程ですり合わせを行う予定である。 最終的にはこれらの結果も反映させ、わが国におけるSP養成のさらなる発展に寄与することが目的である。今年度も大学側が考えるニーズ、SP側が求めるニーズの接点を見出しながら「次世代模擬患者養成プログラム」のトライアル実施継続とそのプログラム評価を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
SP側からは現在のトライアル実施中も何らかのテキストブックが必要との意見が出され、本研究の最終成果物である「次世代SP養成マニュアル」のSPと教員との共同執筆を1年前倒しし、並行して進めることとした。これにより研究計画全体における進捗の若干の遅れは解消できると考える。 また29年度は、過去2年間オブザーバーとしてSPが参加している患者-医師関係の授業において、実際に授業担当者として1コマ担当するトライアルを行う。その中で教育者側の立場からも、次世代SPの担える役割を模索する。終了後に授業評価をSP、受講学生双方が行い検証を行うこととする。進捗を早める意味から、学生ボランティアを対象とした模擬授業ではなく、研究代表者の統括する正規授業枠内でのトライアルを行い研究を進めることとした。 あわせて地域基盤型教育参画への発展性をふまえ、外部団体の協力を得てSPに学習の場を提供する。
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Causes of Carryover |
当初、「次世代SP養成プログラム」は本学で通常行っているSP養成プログラムとは別途に施行し、参加者には謝金、交通費を支払う予定であった。しかし日程の関係で今年度は通常のSP養成プログラムが開催されなかったため、このトライアルを一般のSPにも公開し、準備と事後評価のみ研究参加SPに依頼したため予定されたSPへの謝金、交通費の支出が大幅に抑えられたことが主たる理由である。また外部講師に依頼するプログラムも回数が少なく、学内教員で大半を賄ったことも一因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はプログラムの評価や、トライアル授業の参加SPの人数も増える予定である。またこのトライアル実施中の養成プログラム用のテキストを最終成果物の別冊的なものとして作成することが決まり、作成を早めることとした。追加費用が生ずるためこちらに前年度からの繰越分も用いることとする。 当初予定より改め、「次世代SP養成マニュアル」本体の制作にもさらに力を注ぎ、そのプロセスで得られるSPの見解、大学の見解の差異を明確化することが本研究の本質にも関わると考えられたため、このような使用計画の修正を図ることとした。
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Research Products
(1 results)