2015 Fiscal Year Research-status Report
質量分析イメージングを用いた慢性腎臓病の脂質定量解析
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15K08608
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
早坂 孝宏 北海道大学, 保健科学研究院, 特任講師 (90415927)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イメージング質量分析 / 慢性腎臓病 / 非アルコール性脂肪性肝炎 / カルジオリピン / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)はメタボリックシンドロームを起因として発症し、それと同時に慢性腎臓病を併発する危険性が高いという興味深い報告がある。本研究ではイメージング質量分析および高速液体クロマトグラフ質量分析法を用いて脂質群の変動を評価し、さらには抗酸化物質投与により酸化ストレスの関与を明らかにすることを目的としている。平成27年度は、コントロールおよびNASHモデルマウスの腎組織中の脂質群をイメージング質量分析により測定し、それらの組織内分布を明らかにすることを試みた。その結果、NASHモデル群において1,400~1,500 Daの分子群が皮質領域で減少をすることが明らかになった。これらの分子群について組織上での多段階質量分析を実施し、同定を試みたところ、それらは脂肪酸組成の異なるカルジオリピンであることが分かった。カルジオリピンは酸化ストレスマーカーとしても注目される脂質である。ミトコンドリア内に含まれるカルジオリピンが酸化されると、カルジオリピンに結合していたシトクロムcが遊離し、ミトコンドリア外へと放出される。これがトリガーとなりアポトーシスが起こることが分かってきている。またNASH腎組織をヘマトキシリン・エオジンで染色し観察したところ、イメージング質量分析でカルジオリピンが減少したのと同じく、皮質領域において組織の脱落が確認された。以上のことからNASH腎組織に対して酸化ストレスが影響し、慢性腎臓病の発症リスクが高まることが示唆された。さらにカルジオリピンだけなく、他の脂質の変動もイメージング質量分析により明らかにした。脂肪酸種やホスファチジルエタノールアミンもNASHモデルの皮質領域で減少し、ホスファチジルセリンやホスファチジルイノシトールについては脂肪酸組成の違いにより増減することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度はイメージング質量分析を用いてカルジオリピンを始めとした脂質群のNASHモデルにおける変動を明らかにすることを計画していた。結果としてカルジオリピンの詳細な脂肪酸組成の同定、他の脂質群の変動傾向を明らかにすることに成功した。特にカルジオリピンの減少については、論文化まで進み、すでにAnalytical Sciences誌への掲載が決定している。また平成28年度に予定していたトリプル四重極型LC-MSを用いた定量解析を進めるための条件検討をすでに開始しており、当初の予定よりも大幅に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で当初の予定よりも大幅に進展させることができており、平成28年度も計画通りに進めることとする。一つ懸念するところとしては、腎臓中の酸化ストレスへに対する抗酸化物質の作用効果が異なることが想定されるため、早めにモデルの作製を開始することを検討している。
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Research Products
(6 results)