2016 Fiscal Year Research-status Report
サイトメガロウイルス臨床分離株の感染細胞指向性の違いによる迅速型判別方法の開発
Project/Area Number |
15K08648
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
石岡 賢 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (50305356)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒトサイトメガロウイルス / 細胞指向性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では先天性サイトメガロウイルス感染児の尿中のウイルスをヒト線維芽細胞およびヒト網膜色素上皮細胞に感染させることで細胞指向性の異なる臨床分離株を分離し、その全ゲノムシークエンスを行い、細胞指向性を決定する責任遺伝子を特定し、その領域について型判別可能な迅速診断法を開発することを目的としている。 我々はこれまでに、同一個人から分離され細胞指向性の異なるウイルス株5セット計10株を保持しており、これらの株について次世代シークエンサーとPCRダイレクトシークエンスによってシークエンスを試み、各株とも全ゲノムの85%のシークエンスを決定できた。サイトメガロウイルスは株間で多型を示す遺伝子が複数存在するが、同一個人から分離された株間でそれらの遺伝子には違いはなく、また塩基配列が決定できた領域についても同様に違いはなく、細胞指向性を決定する遺伝子の特定にはいまだ至っていない状況である。これまでに決定できた領域には、研究室株では細胞指向性に関与していると報告のあった遺伝子やULb'領域も含まれているが、我々が分離した株ではこれらの遺伝子、および領域にも違いは認められていない。このことは臨床分離株ではこれまで報告のあった細胞指向性に関与する遺伝子以外にその責任遺伝子が存在することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サイトメガロウイルス臨床分離株の全ゲノム塩基配列は順調に決定できているが、次世代シークエンサーだけでは決定出来ない領域があることで細胞指向性が異なるウイルス間の違いがいまだ確認できていない。そのため当初予定していた株間での細胞指向性を決定する遺伝子の特定につながる組み換えウイルスの作成に着手できていない。PCRダイレクトシークエンスを組み合わせることで全ゲノム塩基配列の決定は継続し、速やかに株間の違いを特定したいと思っているが、全ゲノムの塩基配列の85%を決定した現時点で株間の違いが確認できていないので、細胞指向性の違いは単にウイルスゲノムの変異だけで説明できない可能性も考えなくてはならないかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
塩基配列がまだ決定できていない領域(ゲノム全体の約15%)についての塩基配列を決定し、線維芽細胞でのみ増殖できる株と網膜色素上皮細胞でも増殖できる株との相違点を明らかにし、組み換えウイルスを作成して細胞指向性を確認する。仮に違いがない場合はウイルスゲノムが宿主細胞においてエピジェネティックな修飾を受けている可能性も視野に入れてメチル化部位の違いについて検討してみたい。
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Causes of Carryover |
次世代シークエンサーで決定しきれなかった領域があり、追加でPCRダイレクトシークエンスの必要性が出たことと、細胞指向性を決定する遺伝子の特定が出来ていないためその領域に対する抗原の作成と実験動物を用いた抗体の作成が未着手である点からPCRダイレクトシークエンスと実験動物購入のための経費を一部次年度で使用することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
PCRダイレクトシークエンスと次世代シークエンサーを組み合わせウイルス株の全ゲノムシークエンスを行い、速やかに塩基配列の異なる遺伝子を特定し、細胞指向性を決定するであろう遺伝子の候補として組み換えウイルスを作成したのちにその細胞指向性を確認する。当該遺伝子が特定出来ればただちにその領域を型別に判定可能なリアルタイムPCRの系を構築すると同時に対象の領域の抗原を作成し、抗体の作成に着手する。
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