2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K08664
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
河谷 正仁 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00177700)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林田 健一郎 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40769634)
伊藤 登茂子 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50241675)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経科学 / シグナル伝達 / 生理活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
尿道狭窄モデル(pBOOモデル)を作製した。作製後膀胱は肥厚し、その重量は2週間後に平均3.5倍となった。pBOO処置3日後には神経のマーカーのNF-66が低下した。平滑筋(αSMA),間質細胞(vimentin), 炎症細胞(IL1β)、を上皮細胞・粘膜下組織・平滑筋・漿膜・漿膜下組織で観察したが14日目まで変化ははっきりとしなかった。漿膜―筋層管の間質に線維芽細胞の増殖や白血球や形質細胞が存在していた。神経線維は漿膜とその近くの間質のみに存在し筋層ならびに粘膜下層には認められなくなっていた。 pBOOモデルの膀胱をウッシグチェンバーにのせ粘膜側または漿膜側からATPを測定した。小型ウッシグチェンバーに摘出した膀胱をセットし、粘膜側を灌流液2mlのチェンバーから200ulを採取し、ATP量をルシフェリン-ルシフェラーゼを用いて測定した。pBOOモデルではATP量がコントロールラットの1.7-2.3倍であった。奨膜側でpBOOモデルではATP量は、3-6pM計測された。奨膜側から粘膜側にむかって30cmH2Oの水圧をかけるとATP量は最大2.4-2.8倍に記録したが、pBOOモデルとコントロールとでは増加率に差は認められなかった。カプサイシンに対する反応はpBOOモデルでもコントロールラットと同様にATP放出を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
pBOOモデルでのATP放出機構の変化についてはBiomedical Research に掲載され、漿膜測におけるATP放出が排尿を伴わない膀胱平滑筋収縮をきたす要素であることが理解され始めている。この漿膜側でのATPの放出細胞が免疫細胞系である可能性は他の研究により報告されており、膀胱漿膜側の肥厚と線維化の中でおこす現象として考察される。さらにこの漿膜側ATP増大は求心性神経の興奮を高めて、脊髄では後角にある興奮性の変化が脊髄二層にある抑制性ニューロン活動を変化させ、膀胱の収縮活動性を増大するのかについてを脊髄スライス標本を用いて証明する計画をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度結果を学会発表、論文投稿していくための準備を行うとともに実験結果の詳細な検討、系時的変化の固体差の検討が必要とされる。また、今年度の具体的検討に以下のように計画する。 脊髄Ⅱ層ニューロンで記録されるspontaneous IPSCsは下行性ノルアドレナリンでおこるかについて脊髄スライス標本を用いて検討する。膀胱には畜尿を感知するためのチャネルがあり、ATPを中心とする物質が知覚神経終末を興奮させる。脊髄では上位中枢からの排尿を伝える興奮が下行性にシナプスを作り、グルタミン酸を放出する。また、一次求心性神経終末からグルタミン酸やサブスタンスPが放出され、脊髄中継ニューロン及び二次ニューロンを興奮さる。また、さらに、脊髄内では介在ニューロンがグルタミン酸による興奮性ネットワークを作るとともに、GABAやグリシンによる抑制機構を持つ。排尿反射は毎回中脳中心灰白質を介して橋のある排尿中枢を興奮させ膀胱収縮機構を起こさせている。膀胱を灌流し続けて起こす排尿反射では下行性のノルアドレナリン神経も興奮し、脊髄後角二層の抑制性の介在ニューロンが興奮すると考えられている。 脊髄二層にあるニューロンで特発性ipscを記録し、Bicuculine(GABAA antagonist)とStrychnine(GlyR antagonist)で灌流するとこの特発性ipscがなくなりことから、これら抑制性伝達物質による効果があると考えられている。このスライスでノルアドレナリンを投与すると特発性ipscが増強し、α1拮抗薬で阻害されるかを検討する。pBOOモデルにおいても検討し下行性にノルアドレナリンが放出され抑制性伝達物質が介在ニューロンより放出され脊髄二次ニューロン活動を抑えている可能性があるかを示す。pBOOではこの抑制性ニューロンの活動をなくすと膀胱からの興奮性信号はより簡単に脳幹に伝わり排尿反射の頻度は早くなるかを明らかとする。
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