2016 Fiscal Year Research-status Report
組織所見、音叉検査、遺伝子多型からみた抗がん剤による末梢神経障害の発現予測の検討
Project/Area Number |
15K08675
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
白尾 國昭 大分大学, 医学部, 教授 (10467996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雄己 大分大学, 医学部, 副薬剤部長 (00570087)
久松 靖史 大分大学, 医学部, 助教 (00609670) [Withdrawn]
緒方 正男 大分大学, 医学部, 講師 (10332892)
平島 詳典 大分大学, 医学部, 助教 (60418837) [Withdrawn]
幸野 和洋 大分大学, 医学部, 助教 (80420644) [Withdrawn]
大津 智 大分大学, 医学部, 助教 (80437920)
西川 和男 大分大学, 医学部, 病院特任助教 (70636399)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 抗がん剤 / 抹消神経障害 / 組織変異 / 遺伝子多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗がん剤の中には高い効果を示すにもかかわらず、特定の副作用のために途中で治療を中止せざる得ない場合がある。その代表的な副作用として、末梢神経障害(しびれ)がある。この末梢神経障害を起こす代表的薬剤はプラチナ系薬剤(オキサリプラチンなど)であるが、これらは通常、蓄積用量依存的で、その症状はほぼ不可逆的であるとされている。その他、タキソールなどでも同様の末梢神経障害が高い頻度で発現するが、その発生機序はプラチナ系薬剤とは異なると考えられている。 以上、各種抗がん剤による末梢神経障害の発生機序、発現予測因子を明らかにし、新しい予防方法や抗がん剤の適切な投与方法を開発することは副作用の軽減のみならず、抗がん剤による治療成績向上の点からも重要なことである。本研究の目的は、①オキサリプラチンおよびパクリセルによる末梢神経障害と皮膚の組織学的変性像、音叉検査値、神経伝導速度、各種サイトカイン、遺伝子多型との関連を網羅的に検討し、②末梢神経障害の発現予測因子を見出すことである。 2015年に大分大学医学部腫瘍・血液内科において、オキサリプラチンまたはパクリタキセルを使用した40例のがん患者(大腸癌、胃癌、肺癌)を対象に神経毒性の発現頻度、その程度、発現にいたる薬剤暴露量などについて検討を行った。これらの情報を基に、前向き試験「L-OHP(オキサリプラチン)またはパクリタキセルを投与するがん患者における末梢神経障害の評価と発現予測の検討」の計画書を作成し、2016年より試験を開始する予定であったが、最近、簡易型神経伝導速度測定器が実用化されたため、これを本研究の解析項目に追加することとした。そのため、試験開始が遅れているが、現在、この測定器の実用性、測定値の妥当性について検討中である。これが終了次第、近々に試験を開始する予定である。本研究の目標登録数は計30例で、登録期間は1.5年の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年には、抗がん剤と神経毒性の頻度、程度の検討を行った。対象は大腸癌40例で、Grade 2以上の発現は19例(47.5%)であった。 これらの検討結果を基に、2016年に前向き試験「L-OHPおよびパクリタキセルを投与するがん患者における末梢神経障害の評価と発現予測の検討」の計画書を作成した。計画書の概要は以下の通りである。【目的】L-OHPおよびパクリタキセルの投与によっておこる末梢神経障害と皮膚組織学的所見、音叉検査、各種サイトカインおよび遺伝子多型との関連性を検討する。【NCI-CTCによる評価法、音叉検査法、皮膚生検方法、血液採取法】1)経時的に末梢神経障害(NCI-CTC)の評価を行う。2)音叉検査法:経時的に音叉検査を行う。3) 皮膚生検方法:経時的に下腿外果上方約10cmの上背部より4mmパンチ生検を行う。a. 組織標本の評価:皮膚1mmあたりの表皮下神経叢の軸索密度を測定する。b. 各種サイトカイン測定:皮膚組織検体でのproinflammatory cytokine(IL-2, IL-10, TGF-β1, IL-6, IL-8, TNF-α, IL-1β)の遺伝子発現を調べる。4) 血液採取: a. 各種サイトカイン測定:proinflammatory cytokineの発現を調べる。b. 遺伝子多型:治療前のGSTP1およびERCC1遺伝子変異の有無を調べる。【予定症例数と研究期間】計30例の登録を目標とし、登録期間1.5年とする。 以上、計画書をもとに2016年より試験開始の予定であったが、最近、簡易神経伝導速度測定器が実用化されたため、この項目を試験計画書に追加することとした。現在これらの実用性および検査値の妥当性について検討中であるが、その結果を基に改訂版計画書を作成し、これに沿って2017年より登録を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年より改訂版計画書に基づき症例の登録を開始する。2018年には登録を終了し、年度末には試験結果の解析を行う予定である。本研究を実施するには、臨床研究を熟知する研究者(患者登録、治療、末梢神経障害の把握、各種検体採取など)および各種実験に精通する研究者(サイトカインの測定、遺伝子解析など)など、多方面の知識、技術を持った複数の研究者が協働できる組織が必要であるが、その環境は整っている。本試験の改訂版計画書はほぼ完成された状況である。試験の実施は大分大学附属病院腫瘍・血液内科および薬剤部とする。患者登録、治療、皮膚生検、音叉検査、採血、遺伝子解析、結果のまとめ・解析、公表は代表者と研究分担者が行う。遺伝子多型の解析は主に薬剤部の研究分担者が行う。研究分担者は全て代表者と同じ施設に所属するものであり、協力体制は整っている。さらに、免疫染色、遺伝子解析に関しては当大学分子病理学講座の協力を得ることになっている。また、本試験実施のために臨床研究コーディネーター1名が加わり、患者登録、データ収集・整理などの業務を行う。患者登録はこれまでの腫瘍・血液内科の診療実績より実現可能である。なお、2017年度末までに登録集積が不良であった場合、講座関連病院との多施設共同研究へ移行する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度については試験開始の予定であったが簡易型神経伝達速度測定器が実用化されたことにより解析項目の追加などが行われた。 それに伴い研究計画書が改訂された為物品の購入を見送り翌年度使用予定とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年からは症例の登録を開始、患者登録、データ収集・整理などの業務を行う為引き続き臨床研究のコーディネーターの人件費また解析時に使用する消耗品の購入に支出を行う予定である。
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