2015 Fiscal Year Research-status Report
バングラデシュ南部デルタ地帯における塩害に関する調査
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15K08825
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
梅村 朋弘 愛知医科大学, 医学部, 講師 (10401960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 輝幸 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10156804)
寺崎 寛章 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (40608113)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際保健 / バングラデシュ / 塩害 |
Outline of Annual Research Achievements |
バングラデシュ南部デルタ地帯はガンジス川氾濫原である。低地であり、雨季にベンガル湾で発生するサイクロンや洪水によって海水が浸入しやすい。また、主要産業であるエビ養殖のために海水を引いている。それらの要因が重なり、現地住民の生活用水源であるため池や井戸の水には塩分が混入している。様々な組織(ODAやNGO)がバングラデシュを支援しているが、南部デルタ地帯は首都ダッカから遠く、アクセスが悪いために、支援が届きづらい。住民は自衛手段として、雨季に雨水をためて乾季に利用するなどしているが、限界がある。本研究3年目(平成29年度)の乾季に、分担研究者の福原と寺崎が開発した、太陽熱で水を蒸留する装置(Tubular Solar Still:TSS)を導入予定だが、現地の生活用水源の水質を調査した研究がほとんどないため、平成27年度は、乾季(2月)にパイガサ地域のCharbanda村とParbayarjhapa村(ベンガル湾から約40キロ内陸に位置する)で、ため池と井戸の水質調査を行った。ため池10箇所と井戸2箇所から採水をして分析をした。塩分指標である塩化物イオン濃度は平均で2617 mg/L(レンジ:152 mg/L~6844 mg/L)であった。一方、井戸水の平均塩化物イオン濃度は1750 mg/L(1280 mg/Lと2220 mg/L)であり、地下水にもかなりの塩分が混入していることが分かった。対照としたバングラデシュ南部最大都市であるクルナ市内のため池4箇所の平均は53 mg/L(レンジ:0~129 mg/L)、井戸4箇所の平均は258 mg/L(7~470 mg/L)であった。クルナ市はパイガサ地域より約20キロ内陸に位置するが、ため池に塩分はほとんど混入していなかった。地下水は塩分の混入がみられた。これは塩水くさびの原理で地下に海水が浸入していることが原因と推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目の最大の目標は、TSSによる介入前に現地の水質状況を把握することであった。当初の計画では、Parbayarjhapa村のみが対象村であったが、Charbanda村でも調査をしたという点で、計画よりも進展したといえる。しかし、対象村の生活習慣調査に加えて、住民の血圧測定なども行う予定であったが、これは実施できなかった。現地でホルタルという暴動が続き、渡航制限があったため、人を対象とした調査に関しては準備が十分にできなかったことが要因である。その分、3年目に導入予定のTSSの性能向上に努めた。生活習慣調査や住民の血圧測定などは平成28年度に実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度に実施できなかった生体指標(尿中塩分と血圧)の測定を雨季と乾季に実施して、季節による違いを比較する(雨季は雨水を生活用水源にできるので塩分摂取量が減り、乾季は増えると想定している)。倫理審査などの手続きは完了しており、調査に関する手順などは現地の支援組織(NGO)と調整中である。また、生活習慣も調査予定である。平成29年度の乾季に、現地住民を対象としたTSSによる介入を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度の計画に含まれていた生体指標の調査ができなかったため、その費用が次年度に持ち越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度にできなかった生体指標測定を平成28年度に実施予定である。元々の平成28年度計画および予算にも生体指標測定は含まれていたが、この測定には予定よりも費用がかかることが予想されるため、それに充当する。
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Remarks |
研究発表(雑誌論文)のICCESD2016には、正式な巻号はないが、入力上不可欠な項目であったため、3回目の出版ということで3巻とした。
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