2016 Fiscal Year Research-status Report
D-ニューロンを用いた脳機能評価法の開発に向けた基礎的研究
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15K08872
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
西村 明儒 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 教授 (60283561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石上 安希子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 講師 (60359916)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | TAAR1 / Alzheimer / Dementia / DDC / ssDNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ドパミンやアンフェタミンなどの広いアゴニストスペクトラムを持ち、ドパミン輸送体あるいはドパミンの有効な作用を制御する受容体trace amine associated receptor 1 (TAAR1)に対する抗体を用いて、法医剖検脳の海馬切片に対し、免疫組織化学を行い、解析を行った。さらに、TAAR1とドパミン、アポトーシスとの関連を検討するためにそれぞれドパ脱炭酸酵素(DDC)、single strand DNA(ssDNA)を組み合わせて免疫蛍光二重染色を施した。 結果、TAAR1減少と認知症状とに何らかの関連があると考えられた。特に認知症状の中でもせん妄に着目すると、認知症では記憶障害による二次的なせん妄が見られるのに対し、統合失調症の一次的なせん妄は、ドパミン輸送体によるドパミン放出増加・有効に作用するドパミンの増加に起因するという報告がなされており、認知症によるTAAR1減弱と好対照である。TAAR1の染色性はBaak Stage(BS)の進展とともに低下し、特にstageⅠからⅢまでの間に急激に低下する。BSは、Ⅳ以上になると必ず何らかの臨床症状を示すが、stageⅢの場合、無症状から重症までの可能性があり、しかも症例数が多く、別の指標が待たれていた。stageⅢの中でもTAAR1染色性が低い例は、生前に認知症状を呈していた可能性が高く、TAAR1染色性は、死後の脳機能評価法として有用であると考えられた。また、焼死症例ではTAAR1が低下していたことから、焼死の原因と認知症には何らかの関連があることが示唆された。DDCとssDNAとTAAR1との関係から、球状沈着物は、D-ニューロンのアポトーシスが関係していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、思わしい進捗状況ではなかったが、今年度は、死後の脳機能評価へのTAAR1やD-ニューロンの活用の可能性を示すことが出来、予定通りの進捗状況となっていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、さらに症例数を増やして、本年度見いだした死後の脳機能評価へのTAAR1やD-ニューロンの活用の可能性を明確に導きたいと考える。
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Causes of Carryover |
研究実績の概要に記載したように、今年度は、年度の途中において、認知症の症状が無症状から重症までの可能性があるBraak StageⅢの中の評価をTAAR1を用いて行うことが出来ると判明したため、評価指標の検索を一旦中止したので、新たに一次抗体を購入することを控えた。次年度、検討する症例のBraak Stage評価を既に購入している試薬を用いて行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度にBraak Stage評価を行った症例に対してTAAR1に対する一次抗体を用いた免疫組織科学染色を行う一次抗体を購入する。少額の残高については、筆記用具などの事務用品の購入に充てる予定である。
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