2016 Fiscal Year Research-status Report
新規シークエンス技術による単一個体内でのHBV・HCV遺伝子解析と臨床応用
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15K08995
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
坂本 穣 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (60324191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 信幸 山梨大学, 総合研究部, 教授 (20251530)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | deep sequencing / quasispecies / B型肝炎 / C型肝炎 / 薬剤耐性変異 / DAA |
Outline of Annual Research Achievements |
B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus: HBV)およびC型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus: HCV)のゲノムを、新規シークエンス技術(deep sequencing法)を用いて網羅的かつ詳細に解析することにより、従来の手法では明らかにすることのできなかった単一躯体内での遺伝子変異(quasispecies)の状態から治療反応性、薬剤耐性変異、病態進展機序を解明した。HCVにおいては、とくにインターフェロンを用いないDAA(Direct anti-HCV agents)による治療不成功例では、治療前から存在しているminor cloneが治療不成功時にdominantとなることを明らかにした。したがって治療効果予測には、新規シークエンス技術が重要であることを示している。また、このクローンは治療前にquasispeciesの状態で存在するminor cloneであり、治療後にdominantになったものであった。これは遺伝子の相同性解析により、治療によるimmune pressureにより出現したものではく、治療前のから存在してたresistant associated variants: RAVであることを示すことができた。 一方、HBVでは、HBV-PreS2領域のdeletion mutantや開始コドンの変異が病態と関連することを明らかにした。これもmutantの存在割合をdeep sequencing法により解析すると、変異率1%以上が病態と大きく関連するほか、変異率が上昇するに従い病態が悪化することが明らかになった。しかしこの解析は、横断的解析に過ぎないため、今後単一個体内での経時的変化について、後ろ向き・前向き研究でも明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、HCVに対する新規DAA治療の進歩は著しく、かつて主流であったAsunaprevir+ Daclatasvir治療は、新規薬剤であるSofosbuvir+Ledipasvir治療に置き換わっている。これまでの検討は、Asunaprevir+Daclatasvir治療の不成功例から導き出された結論であるが、この結果が他のDAAでも普遍的にみられる現象であるかは明らかではない。そこで、Sofosbuvir+Ledipasvir治療の不成功例でも同様な検討を行う予定である。またさらに新規薬剤は次々に上市され、これらについても検討予定である。しかし、現在の治療は極めて高い安全性とともに、治療効果も優れ、当院の検討では、治療不成功例はほとんどないため、研究に供する症例及び検体が乏しい現状である。そこで、今後は、同様の症例について、関連病院を含めて集積して検討する予定である。 一方、HBVに関しては、おおむね順調に進捗しているが、病態と遺伝子変異との関連をHBV-Pre S2領域のquasispecies からみた横断的検討は終了した。しかしこの検討はあくまでも、横断的検討に過ぎず、個体内で変化した結果ではない可能性がある。そこで、単一個体内で経時的にquasispeciesが変化し、そのうえで遺伝子変異体の集積が病態とどのように関連するかは、同一症例を用いた単一個体内での変化を後ろ向きに検討することが必要で、一部症例ではさらに、前向きに検討する予定で準備を進めている。また、病態は核酸アナログ製剤を用いた治療介入によって修飾されるが、これについても検討予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
HCVに関しては上述のような成果が得られているととともに、新規治療についても症例追加により検討する予定である。このために広く関連病院からの症例集積を目指すとともに、当院での症例の蓄積を期待する。さらに今後この現象についての分子機構を解明するためにHCVレプリコンを用いたウイルス増殖能、薬剤感受性能について解明する予定である。また、現在解析対象である、遺伝子領域のみならず他の領域についても同様の解析を行うべき準備中である。 一方、HBVについては、上述のように横断的解析が終了し、経時的な検討を開始している。さらには、肝病態の究極の進展状態である肝細胞癌の症例について、肝癌組織からDNAを抽出して、遺伝子変異との関連を明らかにする予定である。現在まで、肝癌組織の固定標本からレーザーマイクロダイセクション技術によりDNAを抽出する技術を確立しているため、今後の解析に供する予定である。また、HBVはcccDNAとして肝細胞核内に蓄積されるほか、宿主DNAに組み込まれることが明らかになっている。今後宿主細胞内に組み込まれたHBV断片の遺伝子解析により、とくにPre S1およびPre S2領域の変異が、宿主内のどのようなquasispeciesの状態で存在し、組み込まれて、病態を関連するのかを明らかにしたい。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Induction of IFN-λ3 as an additional effect of nucleotide, not nucleoside, analogs: a new potential target for hepatitis B virus infection.2017
Author(s)
Murata K, Asano M, Matsumoto A, Sugiyama M, Nishida N, Tanaka E, Inoue T, Sakamoto M, Enomoto N, Shirasaki T, Honda M, Kaneko S, Gatanaga H, Oka S, Kawamura Y, Dohi T, Shuno Y, Yano H, Mizokami M.
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Journal Title
Gut
Volume: in press
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Comprehensive analyses of mutations and hepatitis B virus integration in hepatocellular carcinoma with clinicopathological features.2016
Author(s)
Kawai-Kitahara F, Asahina Y, Tanaka S, Kakinuma S, Murakawa M, Nitta S, Watanabe T, Otani S, Taniguchi M, Goto F, Nagata H, Kaneko S, Tasaka-Fujita M, Nishimura-Sakurai Y, Azuma S, Itsui Y, Nakagawa M, Tanabe M, Takano S, Fukasawa M, Sakamoto M, Maekawa S, Enomoto N, Watanabe M.
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Journal Title
J Gastroenterol.
Volume: 51
Pages: 473-486
DOI
Peer Reviewed
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