2016 Fiscal Year Research-status Report
KATPチャネル・オープナーNicorandilによる新規心腎連関抑制療法の確立
Project/Area Number |
15K09072
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
西垣 和彦 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (60198447)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 造影剤腎症モデル / 慢性腎臓病 / 冠動脈疾患 / 糖尿病性腎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、心臓と同じく血管系臓器である腎臓に対してもNicorandilには腎虚血耐性・腎保護作用があることを、造影剤CKD-CVDウサギを用いたNicorandilの腎保護作用の解明、また、腎機能が低下した冠動脈疾患患者に対するNicorandilの腎保護作用の大規模無作為比較試験。PCIに対するNicorandilの腎虚血耐性・腎保護作用の解明と治療法の確立する。本研究は、PCI施行患者に対する大規模無作為比較試験であり、登録、及び観察期間が必要であるため、登録ならびに無作為割付けを平成27年度で行い、平成28年度以降にNicorandilの心血管イベント抑制・腎保護作用に関する有用性を比較検討するものである。1)低腎機能を合併したPCIを受ける患者に対して、文章でインフォームド・コンセントを取得した後、無作為に2群に分ける。N群(n=1500)は術前よりNicorandil 15mg/dayの内服を行う群であり、C群(n=1500)は対照群としてNicorandilを投与しない群とする。2)両群において、一次評価項目として血清Cr、推定GFRをPCI前後、3日後(ピーク)、1ヵ月後に測定し、その変化量を比較する。さらに、同時点におけるシスタチンC、酸化ストレスマーカーの8-OHdG、血清イソプラスタンを測定する。また、PCI後1年間の心血管イベント、腎イベント(造影剤腎症、透析移行率)を比較し、Nicorandilの心血管イベント抑制・腎保護作用、腎虚血耐性の有用性を検討し、低腎機能を合併したPCIを受ける患者に対する治療法を開発する。問題点に対する配慮・対応策としては、年齢>80歳、血清Cr>2.5あるいは膠病合併症例、悪性腫瘍合併症例、高度肝機能症例、未承諾症例は除外することとする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はこれまで、Nicorandilに関して以下のことを明らかにし、報告してきた。 1)ウサギの冠動脈30分閉塞(虚血)、48時間再灌流モデルにおいて、梗塞サイズはコントロール群41%に対しNicorandil前投与群で25%に縮小する(Ohno Y, Int J Cardiol)。 2)経皮的冠動脈形成術を受けた患者で3分のバルーン拡張を行った際、Nicorandil前投与にて有意に心電図変化が抑制される(Matsubara T, J Am Coll Cardiol)。以上より、虚血心筋耐性、心保護作用のあるNicorandilは、同じく血管系臓器である腎臓に対しても、腎虚血耐性・腎保護作用があるのではないかという着想に至り、corandil持続点滴前投与による臨床研究を行なった。3)腎機能低下のある待機的PCI患者に対して、生理食塩水単独群とニコランジル群との無作為比較試験を施行した。その結果、造影剤使用2日後および1ヶ月後の血漿クレアチニンの上昇率は、Nicorandil群で有意に低く、造影剤腎症の発症率も有意に抑制された(Nawa T, Nishigaki K, et al. Circulation:Cardiovasc Int)。この研究は、米国心臓学会(AHA)2011で最優秀ポスター賞受賞の栄誉に輝いた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの学術的背景と我々のこれまでの知見から、本研究では、Nicorandilによる腎虚血耐性・腎保護作用を明らかにすることで、実臨床における治療法を確立する。今後も引き続き以下の研究を進める。 (1)ウサギ高血糖ウサギモデルの開発とNicorandilの腎虚血耐性・腎保護作用:アロキサン投与によりウサギ高血糖モデルを開発し、Nicorandil投与により糖尿病に対する腎機能障害の変化を、内分泌学的、病理組織学的に比較する。 (2)糖尿病腎症において、Nicorandilによる虚血耐性・腎保護作用が臨床的に有効か、500人を対象とした無作為比較試験を施行しその効果を明らかにする。
|