2016 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病における血管・弁膜石灰化分子病態ネットワークの解明と治療標的分子探索
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15K09271
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
林 松彦 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (60129608)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / 血管石灰化 / NFκB |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病では心血管イベントの発症率が有意に高いことが知られている。両者の関係は「心腎連関」という言葉で表現されるが、とくに慢性腎臓病においては血管石灰化病変の形成・進行が、心血管イベントの発生に大きく関与しており、血管石灰化病変を克服することが患者の生命予後を改善するものと期待されている。本研究では、慢性腎臓病における血管石灰化および弁膜石灰化の分子機構の解明と治療標的分子の同定を目標として、培養細胞、遺伝子操作動物、慢性腎臓病モデル動物を用いて検討を行っている。 昨年度の本研究では、遺伝子操作動物において慢性腎臓病における血管・弁膜石灰化機序の解明を行うために、先ず、各種の遺伝子操作マウスのバックグラウンドを、血管石灰化を生じやすいDAB/2系に変更した。次いで、慢性腎臓病モデルを作成することにより、血管石灰化モデルマウスを新たに樹立した。その慢性腎臓病モデルマウスを用いた検討では、マウスに対して高リン血症治療薬を投与すると血管石灰化が減弱することが示され、臨床例の慢性腎臓病で認められる高リン血症は血管石灰化の強力な促進因子であることが確認された。さらに、本年度は、この血管石灰化発症慢性腎臓病モデルマウスでは高サイトカイン血症を呈しており、サイトカインの阻害薬を投与することによっても、血管石灰化の形成を抑制できることが判明した。また、培養血管平滑筋細胞を用いた検討によって、高リン血症や高サイトカイン血症が血管石灰化を形成・進行させるメカニズムには、NF-kBを中心とする転写調節因子群が関与することが明らかとなった。現在さらに詳細なメカニズムの解明に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である、慢性腎臓病における血管石灰化発症機序の解明のために、計画にしたがい、先ずそのモデル動物作成を行った。さらに,昨年度はこの血管石灰化機序に、血管平滑筋のNFkBが重要な役割を果たすことを明らかとした。本年度も計画に沿い、さらに血管石灰化機序をin vitro、in vivoで検討し、NFkBの下流にあるサイトカイン産生亢進の役割を明らかとした。弁膜の石灰化機序に対する検討がやや遅れているが、概ね予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、血管石灰化を生じる遺伝子操作モデルマウス作成に成功し、その石灰化の場として血管平滑筋が重要であることを示した。今後の研究も、計画にしたがい、NFkB の下流にある石灰化促進因子の同定を行うと共に、石灰化を抑制しうる因子、薬剤の検討を行っていく。また、弁膜石灰化についての研究に若干の遅れを生じているが、これも当初の研究計画にしたがい、病変の場を明らかとするとともに、その発症促進因子を同定していく。
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Research Products
(5 results)