2015 Fiscal Year Research-status Report
骨髄微小環境の老化は多発性骨髄腫の治療標的になりうる:細胞老化と個体老化の接点
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15K09465
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
兼平 雅彦 東北大学, 大学病院, 助教 (90374941)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 多発性骨髄腫 / リゾホスファチジン酸 / オートタキシン / 間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
具体的内容)本研究課題では、骨髄微小環境の老化と多発性骨髄腫進展の関係を明らかし、治療法開発への糸口を探ることを目指した。骨髄微小環境を構成する細胞として、間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell; MSC)が報告されているため、ヒト初代培養MSCをin vitro、in vivo両方の実験で用いた。また骨髄腫細胞は、ヒト骨髄腫細胞株(IM-9、OPM-2、RPMI-8226)を用いた。興味深いことに、骨髄腫細胞からの刺激により、MSCはAutotaxin(ATX)と呼ばれる分子の産生が亢進した。ATXはリゾホスファチジン酸(LPA)と呼ばれる生理活性物質を産生する酵素であるため、MSCのLPAシグナルが多発性骨髄腫進展を制御すると予想した。siRNAによりMSC上のLPA受容体サブタイプ3(LPA3)をノックダウンしたところ、MSCは細胞老化に特徴的な表現型を呈した。更に、ヒト骨髄腫細胞株とsiLPA3-MSCを混合して免疫不全マウスへ皮下接種したところ、control-MSCに比べ、有意な腫瘍サイズの増大を認めた。 意義ならびに重要性)これまでの実験により得られた結果は、LPAシグナルが骨髄微小環境の老化と多発性骨髄腫進展を結びつける"key"であることを示している。これまで不明であったが、多発性骨髄腫の患者の血清LPA濃度は健常人の約3倍であることが報告されている。このことから、LPAシグナルを標的とすることで、新たな多発性骨髄腫の治療が可能になるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨髄腫細胞からの刺激によりMSCのATX産生が亢進すること、そしてLPA3ノックダウンによりMSCが細胞老化の表現型を呈し、多発性骨髄腫の進展を促進することをin vivoで証明できたことは大きな進展であった。残念なことに、細胞老化を呈したMSCが多発性骨髄腫の進展を促進する分子メカニズムの解明には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、細胞老化を呈したMSCが多発性骨髄腫の進展を促進する分子メカニズムを解明する。加えて、加齢とともに起こる骨髄微小環境の変化とLPAシグナルの関係を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
実験用マウスを購入する予定であったが、飼育スペースの関係で購入できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験用マウスを購入する。
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