2015 Fiscal Year Research-status Report
黄色ブドウ球菌菌血症の疫学の変遷と最適な治療法の解明
Project/Area Number |
15K09577
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
笠原 敬 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50405403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 寿一 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20374944)
松元 加奈 同志社女子大学, 薬学部, 講師 (20469084)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / 菌血症 / MLST / 耐性菌 / MRSA |
Outline of Annual Research Achievements |
2008年1月から2012年1月まで当院に通院または入院中の15歳以上の患者で血液培養からメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)が分離された患者44名を対象とした。 分離されたMSSAの微量液体希釈法による薬剤感受性検査では、ペニシリンGの耐性率が47.6%、エリスロマイシン、クリンダマイシンの耐性率が11.9%、レボフロキサシンの耐性率が7.1%であり、MSSAであってもこれらの抗菌薬には耐性を示す可能性が示され、MSSA菌血症での抗菌薬選択においては注意が必要である。なおバンコマイシンの耐性率は0%であった。 ペニシリンGに耐性を示した20株中18株がペニシリナーゼ産生遺伝子(blaZ)陽性であったが、2株は陰性であった。これらの株では、ペニシリナーゼ以外の耐性機序が考えられ、今後検討が必要である。 MSSAのMLSTではST188が22.7%と最も多く、ついでST14が13.6%、ST508が11.3%、ST8およびST20が6.8%であった。日本において院内感染で問題になっているMRSA(New York/Japan株)はST5、米国で特に市中感染で問題になっているMRSA(USA300)はST8であり、今回分離されたMSSAはこれらのMRSAとは由来を異にすると考えられる。なおST508およびST188は、日本の小売店の買い物かごの取っ手から検出された黄色ブドウ球菌の検討で多く検出されたMLSTであった。 44名のMSSA菌血症患者の30日以内死亡率は15.9%であった。薬剤感受性が不良であるMRSA菌血症は予後が悪く問題になっているが、薬剤感受性が良いとされるMSSAによる菌血症であっても、予後は必ずしも良いとは言えず、引き続き菌株および患者に関する基礎的・臨床的検討が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
菌血症由来のMSSAについて薬剤感受性およびMLSTを行い、さらにMSSA菌血症の患者予後について明らかにした。またその結果について、国内および国外の学会で発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
MSSAについてはさらに菌株・症例数を増やして検討を行う。また菌血症由来のMRSAについての薬剤感受性およびMLST、患者予後の検討および抗菌薬の血中濃度や菌株の毒性因子と患者予後との相関について検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定されていた菌株および血中濃度測定検体数が予定よりも少なく、検査を行わなかったために残余金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定されていた検体数分の検体検査は次年度以降に行われる予定であり、その検査に充当する予定である。
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Research Products
(4 results)