2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K09724
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
落合 大吾 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80348713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 守 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (20207145)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 羊水 / 胎児 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国の周産期医療は著しく進歩し周産期死亡率は世界一低い水準に達している。 しかし、その救命された新生児の長期予後に関しては、脳性麻痺などのため依然として厳しい現状である。有効な治療法の乏しい新生児疾患に対し、自己使用目的に妊娠中や分娩時に胎児付属物(羊水、胎盤、羊膜、臍帯)から幹細胞を採取しておき、脳性麻痺などの難治性疾患が発症した際に自己由来の幹細胞を投与し治療する、という新規治療方法の確立を目指した基礎研究を行う。 本年度の研究ではヒト胎児付属物のうち羊水細胞を用い(1)ヒト羊水幹細胞の樹立、(2)ヒト羊水幹細胞secretome解析、(3)ヒト羊水幹細胞培養上清のin vitroにおける抗Apoptosis作用に関する解析、を行った。 De Coppiらの方法に準じ分離・培養した羊水細胞をフローサイトメトリーにて表面抗原を解析すると、間葉系マーカー陽性、血球系マーカ陰性であった。また、通常の培養皿に接着して培養する事が可能で、骨・軟骨・脂肪への分化能を有した。このことから、我々が分離・培養した羊水細胞は間葉系幹細胞の定義を満たした。また、我々はsecretome解析により、その培養上清(Conditioned Medium:CM)中に抗Apoptosis作用を持つ数多くのサイトカイン・ケモカインが分泌されている事を明らかにした。さらに、CMの生物学的作用を明らかにするため、SH-SY5Y細胞にグルタミン酸付加する細胞障害モデルにおいてCM添加群・非添加群を比較し、CMがグルタミン酸誘発性アポトーシスを軽減する作用を持つ傾向がある事を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々のグループは施設内倫理委員会の承認を得て、ヒト羊水を採取・培養・調整し、得られた羊水由来幹細胞を用いた脳性麻痺の治療法開発を目指した新規の実験を開始した。一からの実験系立ち上げであったが、現在のところ概ね順調に経過している。 本年度、我々はヒト羊水幹細胞(human amniotic fluid stem cell:hAFS)の分離・培養に成功した。De Coppiらの方法に準じ、分離・培養した羊水細胞を(De Coppi et al., Nat Biothchnol. 2007)、フローサイトメトリーにて表面抗原を解析すると間葉系マーカー陽性、血球系マーカ陰性であり、通常の培養皿に接着して培養する事が可能で、骨・軟骨・脂肪への分化能を有していた。このことから、我々が、本方法にて分離・培養した羊水細胞は間葉系幹細胞の定義を満たす細胞であると言える。また、我々はその培養上清(Conditioned Medium:CM)中に、抗Apoptosis作用を持つ数多くのサイトカイン・ケモカインが分泌されている事を明らかにした。具体的にはプロテインアレイの方法を用いて培養上清の解析を行い上記の結果を得た。さらに、CMの生物学的作用を明らかにするため、ヒト神経芽細胞腫のcell lineであるSH-SY5Y細胞を用いて、グルタミン酸付加による細胞障害モデルを用いた検討をin vitroにて行った。その結果、検討数が少なく統計学的な有意差こそ得られてはいないものの、CMがグルタミン酸誘発性アポトーシスを軽減する作用を持つ傾向がある事を見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、hAFSを用いた生物学的作用についてin vitro、in vivoで明らかにする事を目的に研究を継続する。 まず、in vitroの検討においては、SH-SY5Y細胞を用いたグルタミン酸付加による細胞障害モデルを用いた検討を継続する。具体的には、実験数を増やして統計学的な証明を行う事と、CMの効果を増強させるためにhAFSを低酸素環境下でpreconditioningを行う事を計画している。間葉系幹細胞に一定時間のpreconditioningを行う事で、抗Apoptosis作用をはじめとした生物学的作用が増強する、との報告は骨髄幹細胞や脂肪幹細胞を中心に数多く報告されているため、hAFSにおいても同様の効果が得られる可能性が期待できるのではないかと考えている。 また、in vivoでの検討を行うにあたり、当初計画していた満期産脳傷害モデルであるRice-Vannucciモデルに加えて、早産児脳傷害のモデルである慢性低酸素モデルの作成を試みる。2つのモデルが作成された後に、hAFSやpreconditioningにより効果を増強させたhAFSの投与を行い、病態改善の有無について評価する計画とする。
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Causes of Carryover |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度に、消耗品を購入する計画である。
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