2016 Fiscal Year Research-status Report
胎児性白血病の発症・進展・自然治癒と造血微小環境の関連に関する研究
Project/Area Number |
15K09729
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
宮内 潤 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (20146707)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川口 裕之 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 小児科学, 准教授 (00313130)
宮下 俊之 北里大学, 医学部, 教授 (60174182)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 胎児性白血病 / ダウン症候群 / 造血微小環境 / 肝芽細胞 / 造血因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダウン症候群の患児にみられる一過性造血異常症 transient abnormal myelopoiesis (TAM)は、新生児期に自然治癒する特殊な胎児性白血病であり、胎児期の主たる造血臓器である肝臓にて生じると考えられている。肝臓の造血微小環境は、肝実質に相当する肝細胞と血管周囲細胞や血管内皮細胞などの間質細胞から構成される。本年度は胎児期の肝細胞(肝芽細胞)がTAMの芽球の増殖と分化に与える影響について、in vitroの実験にてその機能を解析した。 肝芽細胞として2種のヒト由来細胞株(HUH-9、HepG2)およびマウス細胞株FHC-4D2を用いた。肝芽細胞(壁付着細胞)とTAM芽球(浮遊細胞)を、Transwellの多孔膜を介した分離共培養を行い、TAMの芽球の増殖と分化に及ぼす肝芽細胞の影響を解析した。TAMの芽球増殖に対し、HepG2は有意な作用を示さなかったが、HUH-9とFHC-4D2は、胎児肝間質細胞に比して弱いながら、一定の増殖刺激作用を示した。またHUH-9はTAM芽球の巨核球への分化を促進する作用も示した。肝芽細胞株の培養液上清をELISA法にて解析した結果、HUH-9とFHC-4D2細胞の培養上清中には、TAM芽球の増殖刺激作用を有するstem cell factorが高濃度で含まれ、さらにHUH-9細胞培養液上清には巨核球系の造血因子thrombopoietinも含まれることが示された。 以上の結果から、TAMの芽球の増殖と分化には胎児肝の間質細胞とともに、肝芽細胞も関与することが判明した。TAMの芽球は巨核芽球の性格を有するが、これには肝芽細胞が産生するTPOが関与している可能性がある。胎児性白血病の発症と進展には、胎児期の肝臓の造血微小環境が重要な役割を果たすものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はTAMの芽球ならびにその分化した成熟球を、症例特異的なGATA1遺伝子変異を指標として、組織学的にこれを同定するためのin situ PCR法の開発に取り組んだ。しかし本研究に使用する予定のTAMの剖検組織を用いた解析では、材料のホルマリン固定時間等の影響と考えられるが、PCR法による遺伝子増幅が不十分で、明確な結果を得ることが出来ず、当初の計画どおりに研究が進展しなかった。 本年度は肝芽細胞株を用いたin vitroの培養実験を主体として、胎児肝臓の微小環境の役割を解析する研究を開始し、研究実績の概要に記載したごとく、一定の成果が得られた。したがって、初年度は遅滞したものの、それ以降の研究はおおむね計画どおりに進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
肝芽細胞株の培養上清中に産生される造血因子の解析をさらに進め、胎児肝臓の造血微小環境構成細胞から産生される造血因子の役割を探求する。造血因子に対する中和抗体を用いた実験を行い、肝芽細胞株から産生される造血因子の中で、いずれがTAM芽球の増殖と分化にもっとも強い影響を及ぼすかも明確にする。 TAMとともに胎児性白血病の代表的な疾患である、MLL遺伝子変異に関連した乳児白血病症例についても、病理学的な解析を行う。胎児の生体内における白血病細胞の動態を探るためには、胎児死亡の剖検例の解析がもっとも重要と考えられる。日本剖検輯報による検索にて、本研究に適した剖検症例の選別が本年度中に終了しており、次年度ではこれらの剖検症例を用い、芽球の増殖と胎児期の造血臓器との関連を解析する。造血因子に対する抗体を用いた免疫組織化学により、胎児期の造血微小環境における造血因子の産生を解析し、芽球の増殖と造血因子産生細胞との関連を検討する。同じ胎児性白血病でありながら自然治癒を来す予後良好な白血病であるTAMと、高悪性度の致死性疾患であるMLL遺伝子関連乳児白血病との共通点と相違点を明らかにする。
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Causes of Carryover |
初年度の研究に遅れが生じたために、未使用額が生じ、本年度への繰越金となった。本年度はこの繰越金の一部を使用して計画どおりに研究を進めたが、繰越金の全額を使用するには至らなかった。残金は次年度にてその全額を使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
胎児期造血微小環境から産生される造血因子を、胎児剖検組織を利用した免疫組織化学にて同定するため、造血因子に対する特異抗体を購入する。
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[Journal Article] Somatic mosaicism containing double mutations in PTCH1 revealed by generation of induced pluripotent stem cells from nevoid basal cell carcinoma syndrome.2017
Author(s)
Ikemoto Y, Takayama Y, Fujii K, Masuda M, Kato C, Hatsuse H, Fujitani K, Nagao K, Kameyama K, Ikehara H, Toyoda M, Umezawa A, Miyashita T
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Journal Title
J Med Genet
Volume: in press
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
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