2016 Fiscal Year Research-status Report
細胞極性制御因子aPKCによる毛包幹細胞の休眠制御機構
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15K09755
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
長田 真一 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00244484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
能登 舞 秋田大学, 医学部, 医員 (10738462)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞極性 / aPKC / 毛包幹細胞 / 休眠機構 / 毛包新生 / 創傷治癒 / プロテインキナーゼC / 脱毛 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは、これまでに細胞極性制御因子であるaPKCλ(atypical protein kinase C lamda)を表皮細胞特異的に欠損させた変異マウスを解析し、aPKCλが毛包幹細胞の休眠状態を制御することによって、皮膚恒常性の維持に関わっていることを明らかにした。本研究では、この成果をさらに発展させ、表皮に2種類存在するaPKC分子種が制御する毛包幹細胞の休眠制御、創傷治癒、創傷治癒後毛包新生に関わるシグナル経路を明らかにするとともに、両分子種間の機能的差異を解析することを目的に研究を進めている。平成28年度は以下の研究成果を得た。 ①表皮から全aPKC分子種を欠損させた遺伝子改変マウスの作製:マウス表皮では、aPKCλ、aPKCζの2種のaPKCが発現している。両者の機能上の相補性を完全に除去し、aPKCの皮膚恒常性維持における役割を調べるために、aPKCλ・ζダブルノックアウトマウスを作製して解析した。 ②毛包幹細胞の休眠シグナル経路に関わる因子の網羅的スクリーニング:進行性の脱毛をきたす表皮特異的aPKCλ cKOマウスの表皮とコントロールマウスの表皮で発現が変化する遺伝子をマイクロアレイにより解析した。 ③創傷治癒後毛包新生におけるaPKCの役割:創傷は毛包幹細胞を休眠状態から目覚めさせる刺激と言える。マウス背側皮膚に大きな傷 (1cm2以上) を作るとその再生過程で、創傷中央部にWnt 経路依存的に毛包の新生が観察される。この創傷治癒後毛包新生におけるaPKCの役割を調べるために、表皮特異的aPKCλ cKOマウスとaPKCζ KOマウスマウスで創傷治癒過程、および創傷治癒後毛包新生の解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①表皮から全aPKC分子種を欠損させた遺伝子改変マウスの作製:表皮特異的aPKCλ cKOマウスとaPKCζ KOマウスを交配し、aPKCλ・ζダブルノックアウトマウス(DKO)を作製した。生まれてきた仔マウスの中に、遺伝子型がDKOマウスを示すものがなかったため詳しく解析したところ、DKOマウスは普通に生まれてくるものの、生後すぐに死亡することがわかった。 ②毛包幹細胞の休眠シグナル経路に関わる因子の網羅的スクリーニング:生後23日目の休止期のコントロールマウス、および表皮特異的aPKCλ cKOマウスの背側皮膚を採取してマイクロアレイ解析を行い、cKOマウスで発現が2倍以上増減している遺伝子を網羅的に探索した。そのデータを基にパスウェイ解析を行った結果、2倍以上増減する遺伝子の中に、これまで毛包形成に関わることが報告されているHedgehog経路やWnt経路、表皮の極性形成に関与しているDelta-Notch系経路の構成成分が検出された。このことは、行った解析の正しさを意味している。増減を示した遺伝子の発現をreal-time PCRで検証した。 ③創傷治癒後毛包新生におけるaPKCの役割:表皮特異的aPKCλ cKOマウスについては目安としていた20匹の解析が終了した。その結果、表皮特異的aPKCλ cKOマウスでは、コントロールマウスに比べ創傷治癒が遅延する一方、創傷治癒後毛包新生数はむしろ増加していることがわかった。aPKCζ KOマウスについても20匹の解析が終了した。aPKCλの場合と異なり、aPKCζでは創傷治癒、および創傷治癒後毛包新生数にコントロールとの差は見られなかった。以上の結果から、マウスにおいてはaPKCλが主に創傷治癒、および創傷治癒後毛包新生に関与し、aPKC分子種間で機能に差があることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
①表皮特異的λ・ζ DKOマウスの解析:aPKCλ・ζ DKO マウスの表皮細胞増殖能、および細胞極性を解析する。また、生後直後に死亡する原因を解析する。特に、aPKCλ、aPKCζ双方が欠損すると細胞の極性が乱れ、表皮バリア機能が異常をきたすことも考えられるので、表皮バリア機能の異常の有無について調べる。 ②毛包幹細胞の休眠シグナル経路に関わる因子の網羅的スクリーニング:引き続きマイクロアレイ解析の結果、コントロールマウスに較べ表皮特異的aPKCλ cKOマウスで発現の増減を示した遺伝子について、発現パターンをreal-time PCRで検証する。また、aPKCλ cKOマウスで、増減を示した遺伝子が脱毛の進行過程どのような動態を示すのか、蛍光免疫染色法で解析する。 ③創傷治癒過程におけるaPKCλの役割:表皮特異的aPKCλ cKOマウスで創傷治癒が遅延する原因のひとつに、創傷部への表皮細胞の移動の遅れや極性の乱れが考えられる。表皮特異的aPKCλ cKOマウスから表皮細胞を培養して、in vitroで創傷治癒実験を行って解析する。 ④創傷治癒後毛包新生におけるaPKCの役割:毛包新生時にはWnt経路が活性化することが報告されているが、表皮特異的aPKCλ cKOマウス、およびaPKCζ KOマウスにおける毛包新生時にWnt経路が活性化されているのかどうか、real-time PCR、および蛍光免疫染色法で調べる。 ⑤これまでの成果を国際学会で発表し、また論文として国際誌に発表する。
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[Journal Article] Melanotic Malignant Melanoma in Oculocutaneous Albinism Type 4.2017
Author(s)
Ozaki S, Funasaka Y, Otsuka Y, Oyama S, Ito M, Osada SI, Ueno T, Okamura K, Hozumi Y, Suzuki T, Kawana S, Saeki H.
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Journal Title
Acta Derm Venereol.
Volume: 97
Pages: 287-288
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Case of paraneoplastic pemphigus with immunoglobulin (Ig)G and IgA antibodies to various antigens2016
Author(s)
Otsuka Y, Ueno T, Yamase A, Ito M, Osada S, Kawana S, Funasaka Y, Teye K, Ishii N, Hashimoto T, Saeki H.
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Journal Title
J Dermatol
Volume: 43
Pages: 944-946
DOI
Peer Reviewed
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